金融庁は9月29日、貿易の電子書類を3メガバンクが共同発行を予定する円建てステーブルコインと連動させる実証実験を、支援案件に決定した。2026年9月30日付のAI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム第1回会合の説明資料によると、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)の第4号案件となる。フォーラム自体は今秋初めに発足した。新たな資料は、その下で既に動いている案件を示している。
貿易分野の実証実験
金融庁によると、貿易では決済を含む多くの手続きが、輸出企業、輸入企業、銀行、物流企業の間で紙の書類をやり取りする形で今も行われている。貿易関係書類のデジタル化プラットフォームを提供する事業者が、こうした書類をオンチェーン化し、3メガバンクが発行するステーブルコインと連携させる計画だ。書類のやり取りと代金の支払いを連動させる。現在議論されている船荷証券の電子化が実現すれば、書類事務と決済事務をオンチェーンで連動できる可能性があると、資料は説明している。資料は開始時期を示しておらず、参加する輸出企業や輸入企業の名前も挙げていない。
これまでの4案件
PIPは2025年11月7日、金融庁の既存のFinTech実証実験ハブの中に設けられた。資料は各案件と支援決定日を一覧にしている。
| 案件 | 支援決定日 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1号 | 2025年11月7日 | 大手商社のクロスボーダー決済向けに、3メガバンクなどが共同発行する円建てステーブルコイン |
| 第2号 | 2026年2月13日 | 野村證券、大和証券、3メガバンクグループによるオンチェーンでの証券決済 |
| 第3号 | 2026年4月3日 | DCPとGMOあおぞらネット銀行などが主導する、銀行間でのトークン化預金の移転 |
| 第4号 | 2026年9月29日 | オンチェーンの貿易書類と、3メガバンクが発行を予定するステーブルコインの連携 |
3メガバンクは2026年6月、自行のステーブルコインの実取引を今年度中に始めると公表した。資料はこれに加え、2026年8月時点で43の地方銀行などがトークン化預金の実証実験への参加を表明していたとしている。
フォーラムの活動計画
金融担当相がフォーラムの座長を務める。メンバーは有識者ら8人と、金融庁、デジタル庁、財務省、日本銀行、全国銀行協会である。第1回会合の議事次第は、開会、関係省庁等の報告、討議、閉会を挙げており、議事次第のページに発言内容の記録はない。
資料によると、2027年初の第2回会合で、中間整理と官民連携のロードマップを取りまとめる。2つの研究会で検討を進める。一つはオンチェーン金融の環境整備(資産のトークン化、ステーブルコイン、分散型取引所、ウォレット提供業者)、もう一つは金融分野でのAIの健全な利活用である。
説明資料は、政府が2026年7月21日に示した成長投資促進のための金融戦略に盛り込まれたフォローアップ事項も再掲している:
- 日本銀行は、日銀当座預金のオンチェーン対応について、年内に実装に向けた論点と道筋を取りまとめる。
- デジタル庁は、ステーブルコインやトークン化預金の公金給付への活用を検討する。
- 財務省は、国債のトークン化や、元利払いのオンチェーン決済を検討する。
- 金融庁は、民間の決済で主導的な役割を果たすため、自庁の組織拡充を検討している。
市場環境
金融庁は、世界のステーブルコイン市場を約3100億ドル(約48兆円)とみている。ドル建てのUSDCとUSDTで時価総額の約83%を占める。数値は2026年8月末までのCoinMarketCapのデータに基づく。日本国内で流通する円建てステーブルコインは、2025年10月に発行されたJPYCと、2026年6月に発行されたJPYSCである。
