ニデック(6594)の修正再表示は5年前にさかのぼり、貸借対照表への影響は直近年度の赤字だけから想像されるよりも深い。2026年10月1日付の再生に向けた説明資料によると、同社は2021年3月期から2025年3月期までを修正再表示しており、2025年3月期末の純資産は当初の公表より4769億円少ない。Tokyo Briefが先に報じた最終赤字と減損の数字は当期分を扱っている。今回の資料は、その背景にある過去の経緯を示す。
修正再表示が変えたもの
ニデックによると、今回の修正再表示は第三者委員会の調査結果に基づくもので、重要性が低いとして訂正していなかった事項や、調査の過程で判明した事項の訂正も含む。純資産の減少額のうち2080億円は、2025年3月期末の不適切な会計処理に関する第三者委員会自身の数字。さらに2880億円は、派生的な影響として過年度に計上した減損損失である。
5年累計の営業利益は、修正前の8199億円から4373億円に修正され、差し引き3826億円の修正となる。単独で最大の項目はAMECの車載モーター事業の減損2042億円で、資料はこれを2023年3月期に計上したとしている。修正後の決算で収益性の継続的な低下が明確になったことが引き金になったという。2025年3月期末の自己資本比率は51.8%から42.5%に低下する。ニデックは、修正再表示は会計処理の訂正でありキャッシュ・フローには影響しないとしている。
分配可能額を上回る分配
親会社単体への影響は別だ。ニデックはグループ会社の株式を評価減し、子会社の債務超過に関する引当金を計上した。純資産が減ったことで、5年それぞれの決算に基づく配当と自社株買いが分配可能額を上回った。同社が超過分にどう対処するかは、資料に記載がない。
| 期末 | 修正後の分配可能額 | 翌期の配当・自社株買い | 分配可能額超過額 |
|---|---|---|---|
| 2021年3月末 | 74.5 | 92.6 | 18.2 |
| 2022年3月末 | 18.6 | 94.0 | 75.4 |
| 2023年3月末 | -57.9 | 41.3 | 99.2 |
| 2024年3月末 | 19.3 | 53.8 | 34.5 |
| 2025年3月末 | 14.6 | 22.9 | 8.3 |
当期の決算と再生に向けた説明
2026年3月期について、資料は営業損失5190億円と減損6321億円を改めて示した。自己資本比率は16.9ポイント低下し25.6%となった。経営陣は2026年3月31日時点の財務報告に係る内部統制を「有効ではない」と評価した。以前に識別した関税絡みの貿易コンプライアンス問題の開示すべき重要な不備は、新たに全社的な不備が識別されたため解消していないとしている。
2027年3月期について、経営陣は売上高2兆8000億円、営業利益2000億円(営業利益率7.1%)、純利益1000億円を見込み、配当は未定とした。上期の目標は売上高1兆4000億円、営業利益1200億円。同社は、非経常・構造的要因を除く営業利益は前期の1500億円に対し1600億円になるとしている。
2026年9月29日に新社長(最高経営責任者兼最高技術責任者)と、最高コンプライアンス責任者兼最高人事責任者を務める新代表取締役が就任した。社長は2024年4月からニデックの最高技術責任者を務めている。代表取締役はトヨタ自動車での人事職などの経歴を経て、2025年1月にニデックへ入社した。経営陣は、データセンター関連の発電・蓄電・電力変換と、ストレージ・冷却モジュールに注力し、家電・車載事業を縮小するとしている。オルタネーターとハードディスク用スピンドルモーターでの首位、および発電・蓄電池・水冷モジュールの約40%の売上成長を挙げている。
監査をめぐる状況
資料の経緯の項は、会計監査人が有価証券報告書について監査意見を表明せず、半期報告書についてもレビュー結論を表明しなかったと記している。同社は、期日を意識しながら監査意見を得るため、10月中に残る課題を解消するとしている。資料はまた、さらに重要な虚偽表示が識別されれば、業績が再び修正される可能性があるとも注意を促している。
