本文へ移動

金融プロフェッショナル向けに、日本の市場・ビジネス情報を平日夕方に配信。

無料登録
Tokyo BriefTokyo Brief 日本語版日本のビジネスニュースを、夕方に総まとめ。

記事

塩野義、IntraBioを20億ドルで買収合意 希少神経疾患薬AQNEURSAも

塩野義製薬が米国の希少疾患治療薬メーカーIntraBio社の全株式を20億ドルで取得し、AQNEURSAの全世界の権利を得る。同薬は9月18日、毛細血管拡張性運動失調症で初となる承認を受けた。取引完了は11月か12月を目標とし、クリアランスの取得が条件となる。

執筆:Tokyo Brief Desk2026年10月5日3分で読める塩野義製薬4507
琥珀色の実験用バイアルと、二分割で噛み合うカプセルの模型。企業間での希少疾患治療薬の移転を表現

塩野義製薬(4507)は、テキサス州に拠点を置く希少神経疾患治療薬の開発会社IntraBio社の全株式を20億ドルで取得することで合意した。発表文の換算レート1ドル=157.78円では3155億6000万円に当たる。取締役会が決議し、契約は2026年10月5日に締結した。同日の塩野義製薬の開示による。買収は、ニュージャージー州に本社を置く米国グループ会社Shionogi Inc.を通じて行う。

塩野義が得るもの

今回の取引で塩野義は、AQNEURSA(一般名レバセチルロイシン)とその関連化合物について、知的財産や販売権を含む全世界の権利をすべて取得する。塩野義によると、AQNEURSAはニーマン・ピック病C型の神経症状の治療薬として米国と欧州で承認されており、米国で販売されている。塩野義は同病を、遺伝性で進行性の神経変性疾患で、約10万人に1人が発症すると説明している。

2つ目の適応症はより新しい。米食品医薬品局(FDA)は2026年9月18日、AQNEURSAを毛細血管拡張性運動失調症の治療薬として承認した。塩野義はこれを同疾患で初めて承認された治療薬としている。現時点で唯一の承認薬でもあるという。欧州でも適応追加を申請したが、発表文に判断の時期の記載はない。塩野義は、同疾患の発症率を4万人に1人から10万人に1人とする推計を引用している。

事業上の狙い

塩野義は、中核の感染症分野の外で希少疾患事業を育ててきた。2026年4月からは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬エダラボンを世界で販売しており、米国での製品名はRADICAVA。取引完了後は、その米国の事業基盤を使ってAQNEURSAを患者に届けるとしている。IntraBio社の人材とノウハウも取り込む考えで、これにより、脆弱X症候群、Jordan症候群、ポンペ病を対象とする自社の希少疾患開発品や、研究初期段階の候補品の研究開発が加速するとしている。これらは塩野義が示した狙いで、発表文はこれらのプログラムの臨床上の見通しには触れていない。

買収対象の概要

2015年設立で、社長兼CEOのMallory Factor氏が率いるIntraBio社は、本格的な売上が立ち始めたばかりだ。米国会計基準での売上高は、2023年がゼロ、2024年が353万5000ドル、2025年が6786万7000ドル。3年とも営業利益は出ていない。2024年の純利益7828万3000ドルは前後2年の純損失に挟まれており、発表文に説明はない。2025年末の純資産は1億4454万9000ドルだった。

IntraBio社の業績(12月期、米国会計基準)
塩野義の発表文に記載の連結数値(単位:百万米ドル、括弧内は損失)
項目2023年2024年2025年
売上高03.53567.867
営業利益(損失)(22.434)(56.215)(35.292)
純利益(損失)(26.827)78.283(35.371)
純資産35.411135.344144.549

買収額20億ドルに対し、純資産は1億4454万9000ドル、2025年の売上高は6786万7000ドルだった。塩野義製薬は今回の買収を、希少疾患の新製品と専門性を得るための戦略的な事業投資と位置づけている。

条件と時期

取引完了は2026年11月か12月の見通し。各国競争法に基づく待機期間の満了と、関係する国・地域の規制当局の承認およびクリアランスの取得が条件となる。完了後はShionogi Inc.がIntraBio社の議決権の100%を保有する。現在の保有はゼロ。

塩野義は2027年3月期の連結業績への影響を精査中で、開示すべき事項が生じれば速やかに公表するとしている。支払いの資金手当てについては、発表文に記載がない。IntraBio社の売り手の株主は個人、信託、法人などとされるだけで、先方の要請と個人情報保護の観点から非開示。IntraBio社の株主構成も同社の意向で非公表となっている。塩野義はIntraBio社との間に資本、人的、取引のいずれの関係もないとしている。

塩野義の財務アドバイザーはGoldman Sachs、法務アドバイザーはCleary Gottlieb Steen & Hamiltonが務めた。IntraBio社の財務アドバイザーはCenterview PartnersとMorgan Stanley、法務アドバイザーはKirkland & EllisとDLA Piperだった。