厚生労働省は2026年10月20日、化学物質の安全管理に関する7件の改正案についてパブリックコメント(意見公募)を開始した。大半の案は、国による有害性分類の基準日を2025年3月31日から2026年3月31日に改めるものだ。募集期限は11月18日で、意見の提出は日本語に限られる。同省は2027年2月に最終版を公布・告示する予定だ。
皮膚保護具とがん原性物質の記録保存
労働安全衛生規則では、皮膚や眼に障害を与えるおそれ、または皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな化学物質を取り扱う際、事業者は労働者に不浸透性の保護衣などの保護具を使用させなければならない。今回の改正案ではまず、2025年4月1日から2026年3月31日までの国の分類結果により区分1に該当しなくなった塩化鉛(II)など4物質を対象から除外し、告示日に適用する。その上で、対象範囲を2026年3月31日時点で区分1に該当する物質へと改め、2028年4月1日から適用する。厚労省によると、分類から約2年の猶予を設けるのは、事業者が安全データシート(SDS)を作成する準備期間を確保するためだという。
がん原性物質に関する規定も同様の枠組みをとる。事業者は、指定されたがん原性物質を常時取り扱う労働者の健康診断結果を30年間保存し、取扱業務に従事する労働者の定期的な記録も30年間保存しなければならない。改正案は指定物質の分類基準日を2026年3月31日に改め、2029年4月1日から適用する。
濃度基準値と営業秘密
対象から外れる1物質がフタル酸ジエチルだ。改正案では、304物質の濃度基準値を定める告示から同物質とその基準値を削除し、関連する技術上の指針からも同物質の試料採取方法、分析方法、濃度基準値を削除する。いずれも告示・公示の日に適用される。厚労省の概要資料によると、これらの削除はフタル酸ジエチルをリスクアセスメント対象物から除外する改正案に伴う措置だ。
化学物質の譲渡・提供者は、成分が営業秘密に該当し、かつリスクアセスメントの実施に支障を生じない場合、SDSによる通知で化学名の一部を置き換えることができる。改正案は、2026年3月までの年度における国の分類作業で関連する有害性区分に該当しなくなった物質へと対象を広げる。厚労省は例として、これまで「眼に対する重篤な損傷性」で区分1とされていたデカン酸を挙げている。逆に新たに対象区分に該当することになった物質には、2029年3月31日までの経過措置が設けられる。
ラベル表示・SDS交付義務の一括改正
政令および省令の改正案は、国連の化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)に基づく日本産業規格JIS Z7252の分類方法を用い、ラベル表示とSDS交付の義務対象を定める。いずれも2029年4月1日の施行を予定しており、新たに対象に追加される物質のうち既存のものは、追加後1年間はラベル表示義務が猶予される。省令の別表では35物質を追加し、4項目の名称や範囲を変更する。Tokyo Briefの関連記事
別の告示案では、混合物がラベル表示およびSDS交付義務の対象外となる含有量の基準値(裾切値)を改定し、同じく2029年4月1日から適用する。
| 改正案 | 主な改正内容 | 適用・施行期日 |
|---|---|---|
| 皮膚等障害化学物質等の告示 | 塩化鉛(II)など4物質を除外。対象範囲を2026年3月31日時点の区分1該当物質に改定 | 除外は告示日、新範囲は2028年4月1日 |
| がん原性物質の告示 | 分類の基準日を2026年3月31日に変更 | 2029年4月1日 |
| 濃度基準値の告示 | フタル酸ジエチルとその濃度基準値を削除 | 告示日 |
| 技術上の指針 | フタル酸ジエチルの試料採取方法、分析方法、濃度基準値を削除 | 公示日 |
| 営業秘密の化学名通知に関する告示 | 2026年の分類作業で新たに該当外となった物質を追加。該当となった物質には2029年3月31日まで経過措置 | 告示日 |
| 含有量基準(裾切値)の告示 | 含有量が基準未満の混合物をラベル表示・SDS交付義務の対象外とする基準を改定 | 2029年4月1日 |
| 政令・省令 | 基準日を2026年3月31日に変更。35物質を追加、フタル酸ジエチルを削除、4物質の名称・範囲を変更 | 2029年4月1日(削除および2物質の変更は公布日) |
次の節目は意見公募が締め切られる11月18日となる。皮膚等障害化学物質等からの除外やフタル酸ジエチルの削除など最初の改正は、2027年2月に予定される告示・公布の日に適用される見通しだ。
