経済産業相は10月23日、情報処理推進機構(IPA)に来月中に精鋭ハッカーのチームを立ち上げると明らかにした。高性能AIを用いてシステムに攻撃を仕掛け、実際の攻撃者より先に脆弱性を見つけ出すことを狙う。閣議後の記者会見の冒頭発言で表明した。
背景:防御は構造的に後手に回る
経産相は、最近の不正アクセス事案では攻撃者がAIを使って幅広く脆弱性を探索している可能性があると指摘。防御側もAIを活用し、先手を打つ必要があると主張した。
防御側が構造的に不利な理由として3点を挙げた。想定される攻撃を前提に設計されるため事後対応になること、攻撃側は穴を一つ見つければ足りるのに対し防御側は全面を守らなければならないこと、そして攻撃は想定外を突く傾向があることだ。これに対する解は、攻撃者の視点に立ち、防御側も高性能AIを用いて模擬攻撃を行うペネトレーションテストを「徹底的に」実施することだとした。先日の自民党の提言でもAIを活用したセキュリティに言及されていたと指摘した。
チームの位置づけ
経産相は採用する人材について、実際の攻撃者以上の攻撃を仕掛けてシステムの弱点を見つけ出す「トップガン」人材だと表現した。攻撃を念頭に置きつつ防御全体を機能させる人材を「オフホワイトハッカー」と呼び、メンバーの信頼性確保にも配慮してチームを編成するよう指示したと述べた。同省所管のIPAに来月中に設置する。
発言のなかでチームの人数や予算、採用条件には触れなかった。チームに関する質問には、「悪い主体より先に」脆弱性を見つけて修正パッチを当てるという観点から答えた。
PHPの脆弱性を巡る注意喚起
記者からは、プログラミング言語「PHP」の脆弱性と10月21日に公開された更新プログラムについて質問が出た。経産相は、PHPは多くのウェブサイトで使われており影響が広範囲に及ぶ可能性があると述べた。同省はNCOと連携し、22日に所管する約1000の業界団体を通じて注意喚起を行った。IPAのウェブサイトでも速やかな更新を促す注意喚起を掲載した。
同省のシステムや所管団体のサイトが停止している問題について問われると、午前0時30分時点で所管する3団体のウェブサイトが「メンテナンス中」の表示になっていると説明。事務方が詳細を確認しているとした。これらの一時停止とPHPの欠陥との関連には言及しなかった。
中小企業への支援
経産相は、防御が手薄な中小企業を起点にサプライチェーン全体を狙う攻撃が脅威になっていると指摘し、中小企業向けの支援策を2点挙げた。「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の導入経費はすでに「デジタル化・AI導入補助金」の対象となっており、来年3月にはサプライチェーンのセキュリティ対策評価制度の運用を始める。
被害報告を巡っては、攻撃を受けた際の情報提供を企業に求めた10月9日の同省の周知文に言及した。同省は企業からの情報収集やヒアリングを進め、国家サイバー統括室(NCO)に集約している。攻撃の手法や主体については、詳細を明かせばさらなる攻撃を招きかねないとして回答を控えた。
