厚生労働省は、キッセイ薬品工業(4547)が販売する血管炎治療薬アバコパンについて、新規患者への投与開始を差し控え、投与中の患者には中止または代替治療への切り替えを原則として検討するよう医師に要請した。前日の同省部会を受け、キッセイ薬品工業が2026年10月22日付の開示資料で明らかにした。
部会の結論
10月21日に開かれた薬事審議会医薬品第二部会では、厚生労働大臣の報告命令に基づきキッセイ薬品が提出した回答書について、厚生労働省での確認結果を医薬品医療機器総合機構が報告した。同報告命令は、欧米で問題とされている国際共同第III相臨床試験データの信頼性および同剤の安全性について事実確認を求めたものだった。
キッセイ薬品によると、審議では承認審査時の提出資料の信頼性に問題があり得ることが確認された。また、同剤による治療上の有益性がリスクを上回ると判断することは困難とされた。一方、部会は対象疾患が重篤な希少疾病であり、投与中の患者における治療変更は病状や他の治療選択肢を踏まえて個別に判断する必要があるとした。
厚労省による3つの要請
厚労省は同日付で医療機関宛てに通知を発出し、「当面の間」次の対応を要請した。
| 対象患者 | 要請内容 |
|---|---|
| 新規の患者 | アバコパンの投与開始を差し控えること |
| アバコパンを投与中の患者 | 患者ごとの病状、治療効果、他の治療選択肢および治療変更に伴う影響を踏まえ、中止または代替治療への切り替えを原則として検討すること |
| アバコパンの使用を継続する患者 | 5月21日に発出した安全性速報(ブルーレター)を踏まえた適正使用を継続すること |
アバコパンは国内で、ともに指定難病である顕微鏡的多発血管炎(MPA)および多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療薬として承認されている。キッセイ薬品によると、現在も承認根拠となった臨床試験資料ならびに同剤の有益性とリスクについて、行政当局による検討が続いている。
これまでの経緯
今回の措置に先立ち、キッセイ薬品は2つの対応を取っていた。2026年5月15日には医療従事者に慎重な投与を要請する活動を開始し、5月21日には重篤な肝機能障害について国内の添付文書を改訂するとともに、ブルーレターとして知られる安全性速報を発出した。
キッセイ薬品は、厚労省の今回の対応方針を速やかに医療機関へ伝達するとしており、医療関係者や患者向けに「くすり相談センター」を設置している。米国では現在、重症かつ活動性のMPAおよびGPAの患者に対して同剤が提供されている。
業績への影響
キッセイ薬品は業績への影響を精査しており、今後業績に影響を与えることが明らかになった場合は速やかに開示するとしている。今回の開示資料には同剤の売上高や影響額の見積もりは記載されていない。
