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日銀ストレステスト、原油・AI・金利の複合ショックでも銀行資本は維持

日銀は原油価格やAIの収益期待、金利が同時に急変しても銀行の自己資本は十分と判定した。一方で海外ノンバンクとの126兆円に上る結びつきや、地域金融機関で膨らむ円建て債の評価損に注意を促した。

執筆:Tokyo Brief Desk2026年10月23日4分で読める
銀行のバランスシートを表すブロックの積み重ねが、矢印の橋でデータセンターのサーバーラックやファンドの元帳とつながり、手前でストレスゲージがたわんでいるイラスト。

日本銀行は10月23日に公表した2026年10月号の金融システムレポートで、原油価格の高騰とAI投資の収益性に対する期待の低下、さらに大幅な金利上昇が同時に起きるストレス下でも、日本の銀行は耐え得る十分な自己資本を備えていると結論づけた。一方で同レポートは、注視すべき波及経路として、海外のノンバンク金融仲介機関(NBFI)との結びつきの強まりや、地域銀行および信用金庫における円建て債券の評価損を挙げた。

同レポートは総括判断として、資金需要が増加し、足元の金融活動に大きな不均衡はみられないなか、日本の金融システムは「全体として安定性を維持している」と評価した。国際金融危機時並みのストレスと、前述の複合ショックという2つの試算でも安定性は保たれると判定している。

複合シナリオの前提

より厳しい試算は、同レポートの「海外金利上昇シナリオplus」だ。今回のレポートでは、AI投資の収益性期待の低下が及ぼす影響のモデル化を精緻化し、NBFIセクターのポートフォリオ調整を主因にショックが増幅される状況を想定した。試算は銀行105行と信用金庫247庫を対象とし、2029年1〜3月期までを期間としている。

複合ストレスシナリオの主な前提条件
日銀シミュレーションの前提条件であり、見通しではない。国内短期金利はベースラインで据え置き。
変数前提条件
WTI原油価格一時1バレル=180ドルまで上昇後、140ドルで推移
米フェデラルファンド(FF)金利1年間ベースラインを2%ポイント上回った後、緩やかに低下
日米長期金利期間を通じてベースラインを1.5%ポイント上回る
米BBB格社債スプレッドNBFIによるショック増幅に伴い、2026年4月シナリオ比でさらに600bp拡大
海外GDP(特にアジア)最大乖離時点でベースラインを約7%下回る
AI関連株ITバブル崩壊時並みに急落

日銀は、これらのシナリオがあくまで仮想的なものだと強調している。経済や資産価格、政策に関する日銀の見通しではなく、発生確率を判断したものでもない。

ストレスが及ぶ領域

シミュレーション期末の自己資本比率はいずれの業態でもベースラインを下回るものの、期間を通じて規制水準を上回る。日銀は、金融システム全体の安定性は維持されると結論づけている。

もっとも、その結果に至る経路が重要となる。国内の信用コストは国際金融危機シナリオ以上に増加する。原油高が企業収益を下押しする一方、債務返済を和らげる金利低下が生じないためだ。海外エクスポージャーの信用コストは、AI関連の製造業が経済活動の大きな割合を占めるアジアで顕著に上昇する。プライベートクレジットファンドやデータセンター向け融資の減損も信用コストの増加要因となる。

有価証券関連の損失は業態によって異なる。信用金庫は保有する円建て債券のデュレーションが長いため、同債券から受ける打撃が大きい。国際統一基準行では外債の寄与が大きくなる。国際統一基準行は有価証券の評価損益が規制上の自己資本に算入されるため、株安と債券安が同時に進めば自己資本比率を直接押し下げる。

海外ファンドとの結びつき

同レポートによると、プライベートファンドやヘッジファンドを含む海外NBFIに対する邦銀の投融資は、2008年3月の8兆円から2026年6月には126兆円へと拡大した。同じ期間に、海外投資ファンドによる日本市場での保有額も111兆円から408兆円に増加した。レポートは、これにより日本の金融システムが国際金融市場の変動や海外投資ファンドの動向の影響を受けやすくなっている可能性があると指摘する。

エクスポージャーは大手行に集中している。大手行の貸出ポートフォリオに占める海外貸出の割合は30%を超える。海外ファンド向け貸出は海外貸出全体の9%を占め、データセンター向け貸出の比率も限定的だ。いずれも利ざやが大きいため注力分野となっている。

日銀は2つの弱点を指摘する。ファンド向け融資は信用力の高いリミテッドパートナー(LP)の出資コミットメントを裏付けとするサブスクリプション・ファイナンスとして組成されることが多く、投資適格級が多くみられるものの、「海外ファンドの投資実態や価値をタイムリーに把握することは必ずしも容易ではない」としている。資金調達面では、米国の非上場BDC(ビジネス・ディベロップメント・カンパニー)でソフトウェア業界を巡る懸念から2026年初以降、解約に伴う資金流出がみられる。

円建て債券と薄いバッファー

金利上昇に伴い円建て債券の評価損が拡大しており、とりわけ円建て債券の保有規模が大きい地域銀行や信用金庫で顕著となっている。もっとも、金利上昇に対する耐性が比較的低い銀行の間でも、保有残高の削減やデュレーションの短期化を進める動きが多くみられ、評価損の拡大は抑えられている。基礎的な収益力を示すコア業務純益は改善が続いている。

同レポートは長期的な留意点も付記している。人口減少に伴って貸出需要の縮小が続けば、銀行の収益力や損失吸収力が低下する可能性があるという。

最も警戒されるのは海外ファンド向けのコミットメントラインだ。利用率は横ばいで推移しているが、日銀は大規模なショック時には急速な引き出しが生じるおそれがあると警鐘を鳴らしている。