中部電力(9502)は原子力発電事業の固定資産の帳簿価額全額を取り崩して3049億円の減損損失を計上し、さらに653億円の核燃料評価損を追加した。2026年9月中間期の特別損失は合計3703億円となり、同社の通期業績予想は1600億円の黒字から2150億円の最終赤字へと転落する。
基準地震動審査の不適切事案から減損処理へ
発端は、浜岡原子力発電所3号機・4号機の新規制基準適合性審査における基準地震動策定を巡り、同社が不適切事案と呼ぶ問題だ。2026年9月11日に調査委員会が同社へ調査報告書を提出した。中部電力は、申請資料やその後の審査対応の信頼性に重大な疑義が生じている状況において、従前の申請を維持することは適切ではないと判断したと説明している。同社は9月25日、両号機の原子炉設置変更許可申請書および関連申請を取り下げた。初報を見逃した読者向けに、Tokyo Briefの過去の記事へのリンクをここに掲載する。
同社によると、この事案により再稼働時期や安全性向上対策工事費用の不確実性が高まり、将来の事業シナリオの特定が困難になったという。一方で会計上は、中間期末時点で入手可能な情報に基づきキャッシュ・フローを見積もる必要があった。同社は運転停止期間のさらなる長期化、再稼働後の販売収益の減少、安全性向上対策工事費用の増加を想定した。こうした割引前将来キャッシュ・フローが原子力発電事業の固定資産の帳簿価額を下回り、回収可能価額はゼロと見積もられた。
貸借対照表にもその結果が表れている。原子力発電設備は3月末の825億円から9月末にはゼロとなり、装荷核燃料も400億円からゼロとなった。加工中等核燃料は1659億円から1304億円に減少した。
減損処理であり廃炉ではない
中部電力の決算説明資料は、今回の減損損失は会計上の判断であり、浜岡原発の廃止を意味するものではないとしている。コスト回収が見込まれるシミュレーションも存在するものの、現時点で十分な根拠をもって回収可能性を説明することができなかったという。また同資料は、現時点で再稼働について話せる状況にはなく、再発防止と信頼回復が最優先だとしている。開示資料に再稼働時期の記載はない。
計上済みの損失と通期見通し
3703億円はすでに計上済みだ。通期の特別損失見込み額が約3800億円とさらに大きいのは、第3四半期以降に実施する原子力発電設備の維持管理などに係る設備投資についても約100億円の減損損失を計上する見込みであるためだ。
| 項目 | 中間期計上額 | 通期予想 |
|---|---|---|
| 減損損失 | 3049億円 | 3150億円程度 |
| 核燃料評価損 | 653億円 | 650億円程度 |
| 特別損失合計 | 3703億円 | 3800億円程度 |
臨時報告書の訂正報告書によって、これまで未定だった数値が確定した。9月11日に最初提出された臨時報告書では、当期および将来の業績への影響は未定とされていた。10月29日に提出された訂正報告書では、連結損益への影響額を減損損失3049億8000万円、核燃料評価損653億円としている。単体ベースの減損損失は3070億円となる。中間連結損益計算書には減損損失3051億円、特別損失合計3705億円が計上されており、適時開示資料の概数値をわずかに上回る。
通期業績予想の修正
業績予想の修正は原子力関連の損失計上にとどまらない。経常利益予想は750億円引き下げられ、1100億円となる。中部電力は、持分法適用会社のJERAで収支向上を見込む一方、小売部門のミライズでは期ずれ差損の拡大や電源調達費用の増加により収支が悪化すると見込んでおり、その背景として中東情勢の長期化を挙げている。売上高予想は、燃料価格の上昇や燃料費調整額の増加を受け、3000億円引き上げられ4兆2000億円となった。
| 項目 | 前回予想 | 修正予想 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆9000億円 | 4兆2000億円 | +3000億円(+7.7%) |
| 経常利益 | 1850億円 | 1100億円 | -750億円(-40.5%) |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1600億円 | -2150億円 | -3750億円 |
| 1株当たり当期純利益 | ¥211.81 | -¥284.51 | -¥496.32 |
中間期の実績にも同じ構図が表れている。売上高は11.3%増の1兆9500億円となったが、営業損益は1455億円の黒字から781億円の赤字に転落した。経常利益は79.1%減の410億円、親会社株主に帰属する中間純損失は2805億円(1株当たり371円25銭)となった。セグメント別では、JERAの経常利益が786億円から1348億円に増加した一方、ミライズは956億円の経常黒字から1038億円の経常赤字に転落した。自己資本比率は3月末の41.0%から38.5%に低下した。
中間配当は1株当たり35円で据え置き、通期配当予想も70円を維持した。
