内閣府は2026年10月27日付の月例経済報告で、景気が緩やかに回復しているとの基調判断を据え置く一方、個別項目のうち4つの表現を書き換えた。輸出は持ち直しの動きに足踏みがみられる、国内企業物価は横ばいとなっている、消費者物価はこのところ上昇している、業況判断は全体としては改善の動きがみられるとした。
判断表現の変更点
基調判断で挙げるリスク要因は1つに絞られた。9月報告は中東情勢と自然災害の影響を注視する必要があるとしていたが、10月報告は中東情勢のみに言及している。先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるとの見方を維持し、金融資本市場の変動の影響に注意する必要があるとの記述も据え置いた。
| 項目 | 9月報告 | 10月報告 |
|---|---|---|
| 基調判断 | 緩やかに回復しているが、中東情勢や自然災害の影響を注視 | 緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視 |
| 輸出 | 持ち直しの動きがみられる | このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる |
| 国内企業物価 | このところ上昇テンポが鈍化している | このところ横ばいとなっている |
| 消費者物価 | 緩やかに上昇している | このところ上昇している |
| 業況判断 | おおむね横ばい。先行きはやや慎重な見方、中東情勢の影響を注視 | 全体としては改善の動き。中東情勢の影響を引き続き注視 |
下方修正が最も鮮明なのは輸出だ。アジア、米国、欧州連合(EU)向けの輸出で持ち直しの動きに足踏みがみられる一方、その他地域向けは引き続き持ち直しているとした。先行きについては、中東情勢などによる下押しリスクを挙げている。輸入は、米国からの輸入に持ち直しの動きがみられ、このところ鉱物性燃料が増加しているものの、おおむね横ばいとした。8月の貿易赤字は、輸出金額の減少が輸入金額の減少を上回ったため拡大した。
物価:企業物価は横ばい、消費者物価は上昇
企業物価の判断はやや弱まった。9月の国内企業物価は前月比0.3%下落し、9月報告で上昇テンポが鈍化しているとしていた表現を、このところ横ばいとなっているに改めた。国際運輸を除く企業向けサービス価格は、引き続き上昇テンポが鈍化しているとした。
消費者物価については、表現から「緩やかに」が外れた。基調を示す生鮮食品及びエネルギーを除く総合は、9月に固定基準で前月比0.5%上昇、前年同月比2.4%上昇となった。生鮮食品を除く総合も前月比0.5%上昇し、総合は0.4%上昇した。先行きは、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が当面上昇し続けると見込んでいる。
家計の物価予想も背景にある。調査対象世帯のうち、1年後に物価が10%以上上昇すると予想した割合は9月に19.4%となり、8月の18.1%から上昇した。
政策態度:燃料油対策を維持、他の記述は削除
政策の基本的態度は、7月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026」と「責任ある積極財政」の考え方に基づく。中東情勢に対しては、政府が燃料油に対する緊急的な激変緩和措置を実施していると明記。さらに、代替調達や必要に応じた備蓄放出により原油の安定供給を図るとした。
今年度の補正予算については、リスク最小化の観点から編成済みとした。政府は当初予算とあわせ、情勢の変化に応じて適切かつ機動的に執行するとしているが、金額や執行時期は示していない。
9月報告の政策態度にはさらに踏み込んだ記述があった。電気・都市ガス料金の負担軽減策、2026年熊本地震を受けた支援パッケージの速やかな実行、日本銀行が無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促すとした9月18日の決定にも言及していた。10月報告にはこの3点がいずれも盛り込まれず、各措置が終了したかどうかも記されていない。政府は引き続き、日銀が賃金と物価の好循環を確認しつつ2%の物価安定目標を持続的に実現することを期待している。
判断の根拠となった経済指標
個人消費は、4〜6月期の国内総生産(GDP)2次速報で実質民間最終消費支出が前期比0.0%増と横ばいにとどまり、8月の小売業販売額が前月比0.9%減となったものの、持ち直しの動きがみられるとした。鉱工業生産は8月に2.4%低下したが、調査対象の製造業は9月に3.2%増、10月に3.1%増を見込んでいる。8月の完全失業率は0.1ポイント上昇して2.5%となった。4〜6月期の経常利益は前年同期比24.6%増加した。
過去の表現については、Tokyo Briefの過去の記事を参照。
