2026年5月、トーシンホールディングスは8日間、通常の上場企業として営業を続けた。8日目、東京地方裁判所は名古屋を拠点とする同社自身の申立てに基づき会社更生手続の開始を決定し(東京地方裁判所令和8年(ミ)第4号)、経理の管理権を裁判所選任の管財人2名に委ね、会社更生法に基づき事業年度を短縮させた。
ここに至る経緯
今回の申立ての背景には、トーシンが2025年に公表した子会社の不適切会計問題がある。携帯電話販売子会社で売上高と在庫の水増しが発覚し、過年度決算の訂正を余儀なくされたほか、2025年4月期の連結財務諸表について監査法人が意見不表明とした。東京証券取引所はこれを受けて2025年11月22日、トーシン株式を上場廃止リスクを伴う「特別注意銘柄」に指定し、同社は取引銀行との間の財務制限条項(コベナンツ)にも抵触した。同社は2025年8月以降、取引銀行に元本返済の猶予を要請していた。同社の元代表取締役と、更生手続開始の申立てを代理した弁護士が、現在は裁判所選任の共同管財人を務めている。
8日間を数字で見る
この8日間の売上高は3億4100万円、営業損失は4840万円、経常損失は2億3280万円、親会社株主に帰属する当期純損失は2億3690万円だった。最大セグメントである移動体通信関連事業は売上高2億8100万円に対し1800万円の損失を計上した一方、不動産事業とゴルフ事業は黒字を確保し、それぞれ700万円、1000万円の利益を上げた。
| 指標 | 2026年5月1日~8日(8日間) | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | ¥341mn | ¥17.80bn |
| 営業損益 | -4840万円 | ¥259.5mn |
| 経常損益 | -2億3280万円 | ¥71.0mn |
| 親会社株主に帰属する当期純損益 | -2億3690万円 | -13億8000万円 |
| 総資産 | ¥20.97bn | ¥21.78bn |
| 純資産 | ¥893.1mn | ¥1.13bn |
| 自己資本比率 | 3.9% | 4.9% |
更生手続の申立てにより銀行借入金の「期限の利益」が喪失し、長期借入金が貸借対照表の流動負債に振り替えられたことで、短期借入金は60億4000万円から136億4000万円へと急増した。現金は6480万円減少して14億8000万円となり、自己資本比率はわずか8日前の4.9%から3.9%に低下した。
今後の見通し
管財人は2026年9月9日、更生計画案を東京地方裁判所に提出したが、まだ認可を受けていない。同社の継続企業の前提に関する注記は、財務諸表には反映されていない重要な不確実性があると指摘している。裁判所は9月15日、更生計画案を決議に付すことを決定した。議決権者を定める基準日を公告する官報公告は9月下旬、基準日自体は10月中旬、投票期間は10月下旬から11月中旬の見込みで、認可決定は2026年11月中旬を目標としている。
更生計画案は既存株式の全部消却(減資)を提案していない。その代わりに、更生債権の一部を新たな種類株式に転換し、債権者に新株予約権を発行する内容で、既存株主の希薄化は東証が上場廃止基準として定める300%の上限を超えない範囲にとどまる。8日間の期間について配当は支払われておらず、更生手続が続く間は、更生計画に定めがあるか裁判所の許可がない限り配当を行うことはできない。
同社は2026年7月31日、不採算だったゴルフレッスン施設も閉鎖し、管財人が更生計画の下で進める広範なコスト削減策に組み込んだ。
