総務省、デジタル庁、経済産業省は10月27日、次期CRYPTREC暗号リストの改定案について任意の意見募集を開始した。改定案では、ML-DSA-44がセキュリティ基準の下位にあたるCategory 1または2に位置付けられる方式であるにもかかわらず、同リストの耐量子計算機暗号(PQC)の表に追加される。募集期間は11月11日まで。
128ビット級で唯一の例外
CRYPTRECは、電子政府推奨暗号の安全性を評価・監視するプロジェクト。暗号リストは3段階のリストで構成されており、2026年3月の改定で耐量子計算機暗号の「表2」が新設された。表2にはこれまでのところ、公開鍵暗号では鍵共有方式のML-KEMのみが、AESやハッシュ関数のSHA-2、SHA-3とともに掲載されている。今回の改定案はこの表を拡充するもので、Category 3以上の利用を推奨するとしている。
Category 3未満で掲載されるのはML-DSA-44のみ。改定案では、鍵生成に用いる乱数生成器のセキュリティ強度が192ビット以上の場合はCategory 2、128〜191ビットの場合はCategory 1としている。注釈では、可能な限りML-DSA-65またはML-DSA-87の利用を推奨し、長期的な保護が必要なデータを扱う用途ではこれを強く推奨している。
改定イメージの考え方をまとめた資料によると、ML-DSA-44は証明書やDNSSECで広く利用される可能性が高い。また、3つのML-DSAパラメータセットの中で最も性能が高いため、Cloudflareが通常の用途で推奨していることにも触れている。
掲載が見送られた暗号技術
改定案には、ML-KEM-512やCategory 1のSLH-DSA、AES-128、SHA-256クラスのハッシュ関数は掲載されていない。考え方をまとめた資料ではその理由として、表2が移行後も長期的に利用が見込まれる技術を対象としていること、また掲載後に削除する場合は政府調達や相互運用性への影響が生じることの2点を挙げている。Category 1・2のブロック暗号とハッシュ関数は、当面は現行のリストに基づき引き続き利用できる。同資料は、現時点で掲載しないことは将来的な掲載を否定するものではないと付言している。
一方、改定案にはCamellia-192および-256、SHAKE256(ハッシュ長384ビット以上)、一般的な暗号利用モード、ならびにCategory 5のChaCha20-Poly1305が追加されている。
背景にある移行期限
タスクフォースの概要資料によると、政府システムの移行期限は原則2035年とされている。CRYPTRECの暗号強度要件では、128ビットセキュリティは2040年まで利用可能だが、2041年以降は移行完遂期間に入り、2051年以降は順次利用不可となる。
未確定の事項
公表資料によると、ML-DSAおよびSLH-DSAはCRYPTRECで安全性評価などが完了しておらず、改定内容は確定していない。タスクフォースの概要資料では、関連する米国標準のFIPS 204および205の評価が2026年度中に終了する見込みとしている。3省庁は、ML-DSAおよびSLH-DSAのCategory 1・2に関する意見をその他の意見と分けて提出するよう求めており、提出は日本語に限られる。
意見募集期間の終了後、CRYPTRECは提出された意見を踏まえて検討を行い、別途実施している安全性評価などの結果も反映してリストを改定する。公表資料には最終的な改定時期は示されていない。
