日本には固有のキャプティブ制度がなく、金融庁の作業部会が制度のあり方を検討している。公表された2026年10月1日開催の初会合の議事録によると、大半の委員が再保険に限定した制度設計を支持する一方、健全性規制や担保、親会社に対する監督をめぐって議論を交わした。議事録に決定事項は記されていない。
事務局の提案内容
作業部会は、8月31日の金融審議会合同会合で大臣から再保険キャプティブ制度の創設と生命保険のセーフティネット制度のあり方を検討するよう諮問されたのを受けて設置された。キャプティブとは一般に、親会社やグループ会社のリスクを引き受けるために設立される保険会社を指す。現在、日本で再保険キャプティブを活用するには保険会社の免許が必要で、事務局はその負担が重いと指摘した。そのため日本企業はハワイなどにキャプティブを設立している。
事務局は、元受保険会社を通じて自社グループのリスクのみを引き受ける再保険キャプティブを優先して検討するよう提案した。骨子として、免許の審査基準や最低資本金の最適化、契約者のグループ内への限定、制度趣旨を踏まえた引受対象種目の設定、ガバナンス体制における適切性と効率性の両立、支払能力を確保できる範囲での健全性規制の簡素化という方向性を示した。追加的な税制措置は前提とせず、元受キャプティブは将来の検討課題と位置付けた。
企業が求める背景
三菱重工業は作業部会で、賠償責任保険プログラムの上位レイヤー(エクセスレイヤー)で2024年度から一部キャパシティ不足が生じており、今年度は下位のプライマリーレイヤーにも自家保有が広がっていると説明した。同社は4月にハワイで再保険キャプティブを設立しており、年間約1万件の付保証明を発行している。フォーサイトリスクマネジメントは、日本企業によるキャプティブ設立は50年以上にわたり着実に拡大しており、現在は181社あるとみられると述べた。事務局が引用した委員の大学研究室によるアンケート調査では、回答企業の4割弱がキャプティブをすでに設置しているか、検討した経験があった。
委員が提起した論点
大半の委員が事務局の方向性を支持し、複数の委員がまずは損害保険分野から始め、生命保険や医療保険などの分野は対象外とするよう提案した。そのほかはリスクをめぐる議論が中心となった。ある委員は、キャプティブの破綻が元受保険会社を通じて一般の保険契約者に波及しかねないという2層構造の問題を指摘し、キャプティブ自身の自己資本だけでなく、元受保険会社での信用リスク管理や担保のルールも重要だと述べた。同委員は、Class1の最低資本金としてハワイの10万ドル、バミューダの12万ドルを例に挙げた。アクチュアリーとして実務に携わる委員は、設立時の最低資本金が小さくても、健全性規制で高い所要資本が求められれば大きなコストになると指摘し、経済価値ベースの新たなソルベンシー規制がどう適用されるのかを質問した。事務局が引用したアンケート調査を実施した研究室の委員は、最低資本金を引き下げても、元受保険会社が多額の担保を求めれば効果が相殺されかねないとくぎを刺した。
別の委員は位置付けに異論を唱え、キャプティブは保険会社の一類型として捉えるべきではなく、通常の保険市場では吸収しにくいリスクを中心に対象とすべきだと主張した。さらに別の委員は、監督対象が増える中で金融庁にモニタリングを行う体制や人員があるのか疑問を呈した。
座長は事務局に対し、親会社のリスク管理部門に監督をどう及ばせるか次回以降の会合で整理して示すよう求めた。事務局は参考にできる枠組みの一つとして、保険会社の主要株主規制を挙げた。議事録によると、次回会合の日程は後日公表される。
