水産庁は、漁業協同組合(漁協)への加入資格や漁業権行使を巡る地理的な制限の緩和を促すよう、都道府県の監督部門に求める方針だ。信用事業および共済事業のみに係るものを除く「漁協等向けの総合的な監督指針」の一部改正案を2026年10月26日に公表し、意見公募(パブリックコメント)を開始した。締め切りは同年11月25日23時59分。
地区要件
最大の追加点は、地区要件の緩和に関する新たな着眼点だ。水産業協同組合法上、個人の組合員は漁協の地区内に住所を有することが要件とされ、漁業生産組合や漁業を営む法人は地区内に住所または事業場を有することが求められている。改正案は、道路やトンネル、橋の整備により地区外の近隣への転居が現実的な選択肢となったほか、漁場の利用者が減少している地域では、近隣の地区外から新規参入者を受け入れることで漁場の有効活用につながる場合があると指摘。組合員の居住実態や要望、社会情勢の変化を踏まえ、定款で定める地区を広げるよう都道府県が漁協を指導するとしている。
また改正案は、事業場に該当する具体例として、販売施設、漁具倉庫、水産加工場、養殖施設、種苗生産施設を明記した。漁業権行使規則についても、地区外に住所を有する者や地区内に事業場を有する者を組合員行使権の対象に加えることが可能だとしている。
ガバナンスと法令遵守
内部通報に関しては、通報・相談窓口で公益通報者の心理的安全性が確保されているか、調査などを外部委託する場合に委託先の中立性・公正性が確保されているかの2点を着眼点に追加した。また消費者庁の解説を引用し、顧問弁護士を内部通報窓口とすることは通報をためらわせるおそれがあることや、利益相反が生じるおそれのある法律事務所の起用は避けるべきだとの留意点を記載している。
新設されたITシステムの項目では、役員がサイバーセキュリティの重要性を認識し、必要な態勢を整備しているかを問うている。障害者等への対応に関する新設項目では、農林水産省の対応指針に基づく適切な対応を求めている。
このほか細部の修正も盛り込まれた。組合員から仕入れた物品を員内利用として算出する対象には、販売事業と加工事業に加え、保管事業が追加された。個人データの漏えい等に関する報告要件の一部の文言が見直されたほか、引用する施行令の条項番号も改められた。女性役員の登用に関する項目では、引用元が第5次男女共同参画基本計画(2020年12月25日閣議決定)から第6次計画(2026年3月13日閣議決定)に更新された。
手続の位置づけ
今回の意見公募は行政手続法に基づくものではなく、任意の手続として実施される。水産庁は提出された意見を考慮した上で決定するとしており、個別の回答は行わない。改正案の施行期日は「令和8年(2026年)○月○日」とされ、月日は空欄となっている。公示資料には、広く意見を募ること以外に改正の理由は示されていない。意見の提出は日本語に限られる。
