enish(3667)の取締役会は10月26日、5月から進めていた資金調達が停滞したことを受け、これに代わる新たな資金調達を決議した。同社はケイマン諸島の投資ファンドであるEVO FUNDを割当先として第24回新株予約権55万8000個(潜在株式数5580万株)を発行し、5月に同ファンドへ割り当てた第22回新株予約権を消却する。第22回新株予約権は発行総数21万個のうち10万5540個が行使されたが、調達額は差引手取概算額の11億2000万円に対し3億2000万円にとどまり、10月16日から23日にかけては一度も行使されなかった。残る10万4460個は1個当たり2円で取得し、11月10日に消却する予定だ。
株主が負う希薄化の規模
新株予約権がすべて行使されると5580万株が新たに発行される。これは2026年6月30日時点の発行済株式総数5088万2560株の109.66%、総議決権数50万8619個の109.71%に相当する。2つの数値の差は、分母を株式数とするか議決権数とするかの違いによるものだ。
EVO FUNDは現在、enish株を保有していない。仮にすべての新株予約権を行使して取得株式を保有し続けた場合、議決権保有割合は最大52.31%(総議決権数106万6619個のうち55万8000個)に達する。もっとも、これは理論上の上限だ。同ファンドは自らを純投資家と位置づけており、行使により取得した株式は市場で売却する方針だ。有価証券届出書でも、経営権を掌握する意図はないと説明されている。
当初行使価額は21円で、毎取引日に直近2連続取引日の最安値終値へディスカウントなしで修正される。下限行使価額は11円で、上限は設けられていない。行使期間は2026年11月12日から2028年12月12日まで。EVO FUNDは2028年11月13日までに全数を、2027年11月12日までに少なくとも27万9000個を行使する契約を結んでいる。ただし、enishが行使停止指定や新株予約権の取得通知を行った場合、あるいは認められた延長期間を超過した場合には、この行使義務は消滅する。
差引手取概算額の11億5000万円は、すべての新株予約権が21円で行使された場合の想定額だ。有価証券届出書によると、すべて下限の11円で行使された場合の調達額は最低の6億1490万円となり、全く行使されない可能性もあるとしている。
調達資金の使途
enishは必要資金を11億5500万円としている。仮に希薄化率を約70%に抑える規模に発行を縮小した場合、調達額は約7億3600万円にとどまり、同社の試算では4億1900万円不足する。また、約2カ月を要するとして株主総会での承認手続きを見送り、代わりに独立した第三者委員会の判断に依拠し、同委員会は10月23日にこの資金調達を妥当とした。調達額が計画を下回った場合は、以下の3つの使途へ記載順に充当される。
| 資金使途 | 金額(百万円) | 支出予定時期 |
|---|---|---|
| 第3回社債の償還 | 100 | 2026年11月〜2027年4月 |
| ゲーム事業投資 | 655 | 2026年11月〜2028年11月 |
| 暗号資産の購入(デジタル・アセット・トレジャリー) | 400 | 2027年8月〜2028年11月 |
| 合計 | 1,155 | - |
ゲーム事業に充てる6億5500万円の内訳は、新規タイトルの開発・運営に3億5500万円、IPの権利取得に2億円、周辺事業に1億円となっている。同社によると、麻雀ゲームおよび7月に配信を開始した自転車アニメ題材のゲームはいずれも売上が計画を下回っている。
暗号資産への配分額は、4月時点の計画だった6億4000万円から減額された。同社が有力な投資対象として唯一挙げているトークンはソラナ(Solana)だ。開示資料によると、ビットコインやイーサリアムなど他の特定資産の購入は決定しておらず、取得分はステーキングや貸出を行わず保有する方針としている。すでに手元資金で約1億円相当のソラナを購入済みであり、計画総額は5億円となる。過去のTokyo Briefの記事
当面の資金需要には上限1億円のゼロクーポン社債で対応する。11月26日にEVO FUNDへ発行する予定で、それまでに新株予約権の行使による払込金があれば250万円単位で元本を減額し、発行後も新株予約権の行使に応じて繰上償還する。11月27日以降は、株価の終値が11円以下となった場合、社債権者は繰上償還を請求できる。なお、新株予約権の割当日は11月11日の予定だ。
