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ステーブルコイン事業者、金融庁に100万円移転上限の撤廃要望 全銀協は慎重論

JPYCとSBI VCトレードが円・ドル建てステーブルコインの1回100万円の移転上限緩和を求める一方、全国銀行協会は第二種資金移動業の上限緩和には極めて慎重な検討が必要と主張

執筆:Tokyo Brief Desk2026年11月4日3分で読める
1回あたりの移転上限を表す、狭いゲートに押し込められる大量のデジタルトークンとその後ろに滞留するトークンの山。

金融庁の「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」は2026年11月2日、業界3者からヒアリングを実施し、このうち2社がステーブルコインの1回あたり100万円の移転上限の緩和を求めた。3者目の全国銀行協会はこれに慎重な姿勢を示した。金融庁は会合の議事次第で、各社の資料は各社の見解に基づくものであり、同庁の見解を示すものではないとしている。

上限が阻む取引

金融庁事務局の説明資料は制度の仕組みを整理している。第二種資金移動業者が発行する円建てステーブルコインには1回あたり100万円の送金上限が課されており、登録を受けた仲介業者が取り扱う外国ステーブルコインにも同じく1回100万円の移転上限が適用される。電子決済手段の第3の類型である信託型ステーブルコインには上限がない。事務局が示した討議事項は、この上限についてどう考えるかをメンバーに問うにとどまっている。

JPYCは、上限が効くのは利用者間の移転ではなく発行の段階だと指摘する。同社の試算では、自治体が住民10万人に1人5万円ずつ給付するため50億円をJPYCに換える場合、まとめての発行が1件の送金と数えられるため、5000回に分けて発行する必要がある。同社は、一括発行を個々の配分の積み上げとして扱うことや、追加的な利用者保護措置とあわせて公的主体や銀行・証券会社、本人確認済みの法人について上限を撤廃または別枠化することを提案している。

SBI VCトレードは、上限が課される米ドル建てステーブルコインのUSDCとRLUSD、および上限のない円建て信託型のJPYSCを取り扱っている。顧客が一度に移転・売却できるのは約100万円までで、保有上限も100万円とされている。月末残高が6カ月連続でこれを超えた場合、同社が超過分を買い取る。同社は、この上限は規制の緩い資金移動業者に送金を認めるための仕組みだと主張し、日本の制度との同等性が求められる外国電子決済手段について、上限と買い取り措置を先行して撤廃するよう金融庁に求めている。

銀行界は慎重論

全国銀行協会は、第二種資金移動業の規制枠組みを維持したまま100万円の上限を撤廃・緩和することは「極めて」慎重に検討すべきだとしている。資料では4つの理由を挙げた。第二種資金移動業者では発行急増に対して資産保全にタイムラグが生じる可能性があり、休日を挟む場合は10暦日を超えることもあり得る。破綻時に従来の供託ルートで返還する場合、最低170日を要する可能性がある。また、24時間移転可能な手段では償還請求が集中する「デジタル・ラン」が起き、銀行の流動性に影響を及ぼすおそれがある。さらに、高額で自由に流通するトークンはマネーロンダリングのリスクを高める。全銀協は、高額の電子決済手段は認可制の第一種資金移動業者が取り扱うべきだとしている。

業規制が未定のレンディング

SBI VCトレードはステーブルコインのレンディングサービスについても説明した。顧客からの借入残高は約107億円で、内訳はJPYSCが76億5000万円、USDCが30億6000万円となっている。期間は1カ月、3カ月、6カ月の固定で中途解約はできず、預金保険や分別管理の対象外だとしている。同社は、ステーブルコインのレンディングに関する業規制は未定であり、暗号資産と同様の規制を設ければ顧客の安心感につながると主張する。金融庁事務局の資料も、同業務に包括的な規制がないことを確認した上で、どう対応すべきかをメンバーに問うている。