国土交通省は、基礎ぐいを有する建築物の転倒に対する検証・改修指針案について意見募集(パブリックコメント)を開始した。募集期間は2026年10月30日から11月29日午前9時30分まで。行政手続法に基づく手続ではなく任意の意見募集で、住宅局建築指導課が窓口となる。
指針案策定の背景
同指針案は、2025年12月23日に公表された「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」の最終とりまとめを受けたものだ。最終とりまとめは、現行基準(2001年国土交通省告示第1113号)以前に建てられた建築物について、地震時に支持性能が容易に失われるおそれのある杭、片側への傾斜を生じやすい上部構造、杭の支持力喪失後に建物を支えられない地盤という3つの要因が重なると、転倒の可能性が高まると指摘していた。
指針案はこの最終とりまとめの注意喚起を踏襲し、建築物の転倒は非常にまれな被害であり、現行基準以前のすべての建築物が直ちに危険とは言えないとしつつ、安全性の確保に向けた取り組みは必要だとしている。
第1段階:スクリーニング
第1段階では、転倒防止に有効な条件を調査する。まず基礎に関する条件として、杭の耐震設計が実施されているか、場所打ちコンクリート杭やSC杭、鋼管杭など靭性能の高い杭が使われているか、1階部分の全面に地下階があるかを確認する。いずれにも該当しない場合に上部構造の確認に進むが、該当する項目がある場合でも上部構造の検証を行っておくことが望ましいとしている。
| 区分 | 条件 | 指針案の判定基準 |
|---|---|---|
| 基礎 | 杭の耐震設計 | 設計図書で実施を確認。図書がない2001年より前の建築物は未実施とみなす |
| 基礎 | 靭性能の高い杭 | 場所打ちコンクリート杭、SC杭、鋼管杭。それ以外はPC杭と想定 |
| 基礎 | 地下階 | 1階部分の全面に地下階がある |
| 上部構造 | 形状 | 塔状比2.5以下 |
| 上部構造 | 柱の軸力分担 | 鉛直荷重の偏りが小さいこと。偏りの目安として比率0.5以下を例示 |
| 上部構造 | 冗長性の高い支持条件 | スパン数が3以上 |
指針案によると、これらの条件は転倒しないことを保証するものではなく、基本的には調査の優先順位を定めるための情報であり、該当する項目が少ないほど転倒の可能性が高まる。情報がない場合は建物所有者にとって不利(安全側)に扱われる。設計図書がない場合、2001年告示以前の建築物は杭の耐震設計が未実施とみなされ、杭種は既製コンクリート杭(PC杭)と想定される。調査しなかった項目も、条件を満たさないものとして扱われる。
第2段階:検証
スクリーニングを通過しなかった建築物は、2つのルートのいずれかで詳細に検証する。1つ目は良好な地盤の確認で、杭の支持力に期待せず地盤の支持力を評価する。2つ目は基礎ぐいの性能確認で、一次設計における杭の耐震設計の検討、または杭が脆性的破壊を生じないことの確認のいずれかを行う。
地盤の確認ルートでは、建物荷重を短期支持力および極限支持力と比較し、リスクを低・中・高の3段階で評価する。液状化も考慮し、地盤調査の範囲は深さ20メートル、地表面加速度は350ガルに設定する。既存建築物で多く用いられているPC杭については評価式の適用性が明らかでなく、特別な調査・研究の対象になるとしている。動的有限要素法(FEM)などによる詳細な解析も認められ、その場合は第三者評価の取得が望ましいとしている。
第3段階:対策
検証で転倒メカニズムに達する可能性が高いとされた場合、対策として、杭頭の補強、増し杭、塔状比を下げるための上層階の減築、杭の負担を均等に近づける耐震改修、地盤改良、1階床の構造床化が挙げられている。指針案は、構造床化によって杭の損傷自体は防げないものの、直接基礎的な支持力が確保できていれば、沈下や傾斜が生じた場合に進行を緩和する効果が高いとしている。
指針案は検証・改修の方法を示すもので、改修期限は設けていない。
