金融庁は2026年9月16日、金融商品取引法および公認会計士法違反に対する行政処分である課徴金納付命令の審判手続の運営方法を見直す改正内閣府令を公表した。同府令は2026年11月30日に施行され、被審人や証人は記録を電子的に提出できるほか、出頭に代えて映像・音声による通信手段での出席が認められ、通知も書留郵便ではなく電子メールで受け取れるようになる。
今回の改正は、金融商品取引法や証券の振替に関する規定を見直す2023年成立の法律の段階的施行に伴うものだ。金融庁は改正案の確定に先立ち、2026年7月10日から8月10日までの1カ月間、意見公募(パブリックコメント)を実施し、寄せられた8件の意見を回答とともに公表した。
複数の意見提出者は新たなデジタル手続をより厳格にするよう求めたが、金融庁はそのほとんどを退けた。ある意見は、画面外から回答を助言する者がいないかを確認するため、審判開始前に証人のいる部屋を360度カメラで確認することを義務付けるよう求めたが、金融庁は一律の手順を定めるのではなく、審判官が個別の事案ごとに適切な方法を判断すべきだと回答した。別の意見は、マルウェア感染や情報漏えいのリスクを理由に、関係者が個人所有のUSBメモリを金融庁端末に直接接続して事件記録を複写することをやめさせるよう求めたが、金融庁はオンラインシステムを利用できない当事者のアクセス手段が失われるとして、この方法を維持した。各意見への回答の概要は以下の通り。
| 項目 | 意見の要望内容 | 金融庁の判断 |
|---|---|---|
| 宣誓の朗読 | 書記官による朗読ではなく署名で足りるようにする | 口頭朗読の要件を維持 |
| リモート審判でのカメラ確認 | オンライン審判開始前に室内を360度カメラで確認することを義務付ける | 審判官の個別判断に委ねる |
| 金融庁端末でのUSBメモリ使用 | サイバーセキュリティ上の理由から個人所有のUSBメモリを禁止する | オンラインシステムを利用できない当事者のアクセス手段を確保するため、この選択肢を維持 |
| 未達の電子メール通知 | 電話連絡やポータル通知による代替手段を義務付ける | 一律の規定は設けず、個別に対応 |
| 海外への公示送達 | 海外の当事者が公示された事実をどのように知るかを明確にする | 方法は個別判断に委ね、金融庁ウェブサイトや掲示板への掲示などにより実施 |
手続の一つの特徴は変更されずに残った。証人が宣誓を朗読できない場合、審判書記官が代わって朗読しなければならない点だ。ある意見提出者は、宣誓の実施方法にかかわらず記録には宣誓の事実が記載されるため、署名で足りるはずだと主張した。金融庁はこれに同意せず、朗読によって証人が宣誓下にあることを確実に理解できるようにする必要があり、他の日本の法令でも同様の扱いがなされていると回答した。
金融庁の課徴金処分を争う企業や個人にとって、実務上の変化は現実のものだ。被審人や証人は、金融庁の審判廷まで出向く代わりに、審判官が適切と認める場所から映像・音声による通信手段で出席できるようになり、事件記録も電子的にやり取りできるようになる。ただし、金融庁の意見への回答からは実際の限界も見て取れる。映像による審判中に室内にいる人物を確認する方法は審判官の個別判断に委ねられ、個人所有のUSBメモリを金融庁端末に接続する運用も維持され、金融庁はセキュリティ上の懸念について運用面で引き続き注意を払うとしか述べていない。
