金融庁の企業会計審議会監査部会は10月2日、日本の監査基準の改訂案をパブリックコメント(意見公募)に付すことで大筋合意した。公表された第57回会合の議事録で明らかになった。改訂案は継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)の評価期間を延長し、監査報告書に継続企業の前提に関する区分を設ける対象を広げる内容だ。会合では、改訂案が他の主体に委ねている領域を巡り、委員から議論が交わされた。
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改訂案の主な内容
改訂案では、公表される財務諸表の承認日後少なくとも1年間を対象とする経営者による継続企業の前提の評価を、監査人が検討することを求める。事務局によると、現行の実務では検討すべき合理的な期間は少なくとも決算日から1年間とされている。
監査報告書の記載に関する変更はさらに幅広い。重要な不確実性が認められる場合の現行の記載要件は維持した上で、重要な不確実性が認められない場合にも、監査報告書に継続企業の前提に関する区分を新たに設ける。経営者が重要な不確実性は認められないと結論づけるに当たり重要な判断を行っている場合、監査人は経営者の評価をどのように検討したかを説明する。改訂基準は2028年3月期決算から適用される予定で、日本公認会計士協会(JICPA)には実務指針を早急に作成することが要請される。
不正対応に関しては、監査基準の本文は改訂しない。事務局は、改訂された国際監査基準(ISA240)の中核的な内容は日本の不正リスク対応基準に既に盛り込まれているとし、実務上の変更には実務指針で対応すると説明した。
委員から異論が出た点
最も強い異論が出たのは監査基準ではなく会計基準についてだった。欠席した委員の1人は意見書を提出し、経営者に継続企業の前提の評価と財務諸表注記での結果開示を義務づける会計基準を持たない主要国・地域は、事実上日本だけだと指摘した。同委員は、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表しているプロジェクトの説明が、JICPAの既存の実務指針の移管に焦点を当てていると指摘。ASBJに対し国際基準と整合する会計基準の整備を強く求めるべきであり、ASBJが対応しない、あるいは対応できない場合には、企業会計審議会で基準策定を検討すべきだと訴えた。
部会長は、監査基準が会計基準のあり方を指図すべきではないとし、事務局にもその点の記述は簡潔にとどめるよう求めていたと説明した。別の委員は、財務諸表への注記規定がなければ、監査人が有価証券報告書の「事業等のリスク」の記載を参照することになりかねず、長年維持されてきた二重責任の原則との整合性に疑問が生じると警鐘を鳴らした。さらに別の委員も、国際会計基準(IFRS)や米国基準に相応する会計基準の整備を働きかけるよう金融庁に求めた。
不正に関しては、委員の1人が金融庁に対し、基準改訂は不要と結論づけるに当たって実際の不正事案について何を検証したのかを示すよう求めた。別の委員は、2013年導入の不正リスク対応基準が上場企業のみに適用されている点を挙げ、非上場の大会社への適用も検討するよう求めた。事務局は意見を受け止めるとしたものの、その場では結論を出せないと回答した。さらに別の委員は、監査人がリスクの高い監査先を敬遠するなど、意図せざる影響が生じないか事後に検証するよう促した。
複数の委員は、健全な企業に対して追加の対応負担が生じると受け止められないよう求めた。また、ある委員は開示内容が定型文(ボイラープレート)化しかねないと懸念を示した。
今後の手続き
部会長は改訂案が大筋で合意されたと述べ、文案の修正は部会長に一任された。事務局は、修正後の文案をメール等で委員に共有した上で速やかに公表し、1カ月程度の期間を設けて意見公募を行うと説明した。金融庁の企画市場局長は、その後速やかに企業会計審議会の総会に諮りたいとの考えを示した。次回の監査部会の日程は未定となっている。
