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日本M&Aセンターホールディングス、2回の違法配当で取締役提訴と株主返還を見送り

第三者委員会は、法定上限を超える2回の配当を承認した取締役について刑事上の故意は否定したものの、民事責任は否定できないと指摘した。日本M&Aセンターホールディングスの監査等委員会は提訴を見送り、同社は株主に配当金の返還も求めない。

法定上限を示す透明なゲージを超えて積み上がった2つの配当台帳の束と、その横に置かれた空の決裁トレーを描いたイラスト。

日本M&Aセンターホールディングス(2127)は、法定の分配可能額を超過した2回の中間配当を巡り、取締役に対する責任追及の訴えを提起せず、株主にも配当金の返還を求めないことを決めた。2026年10月30日に受領した第三者委員会の調査報告書を受けた判断だ。

第三者委の調査によると、2024年12月5日と2025年12月5日を効力発生日とする中間配当はいずれも会社法第461条に違反していた。1回目は配当総額44億4000万円で分配可能額を7170万円超過し、2回目も総額44億4000万円で超過額は8億3320万円だった。関連情報はTokyo Briefの過去の記事も参照。

2回の中間配当の概要
出典:同社の開示資料および第三者委員会の調査報告書。金額は表示のため端数を四捨五入しており、余裕額は第三者委員会の概算試算
項目2024年12月5日効力発生2025年12月5日効力発生
配当支払額44億4000万円44億4000万円
効力発生日時点の分配可能額43億7000万円36億1000万円
分配可能額の超過額7170万円8億3320万円
臨時計算書類を作成していた場合の余裕額約81億円約62億円

発生原因

第三者委は原因として4点を挙げた。分配可能額を検証する体制がなく、職務権限表に定める承認手続も運用されていなかったため、確認の担当者が定まらず、実際には誰も確認していなかった。外部の弁護士や会計監査人に適法性を相談したこともなかった。

関与した役職員の多くは、中間配当の財源が前事業年度末の分配可能額に限られ、期中の利益を算入するには臨時計算書類の作成と承認が必要であることを知らなかった。また、取締役会は各配当を独立の議案とせず、四半期決算短信の承認をもって決定しており、取締役会資料には持株会社単体の貸借対照表の数値が記載されていなかった。さらに、監査等委員会も内部監査も、配当の財源を具体的な監査項目としていなかった。

第三者委の試算では、各年9月30日時点で臨時計算書類を作成していれば、いずれの配当も分配可能額の範囲内に収まり、約81億円と約62億円の余裕があったという。

取締役の責任

第三者委は、配当を承認した取締役が上限超過を認識していた証拠はなく、会社法第963条の刑事罰における故意は認められないとした。一方、民事責任については、承認した取締役が上限超過の有無の確認を怠ったとし、同法第462条に基づく責任がないと断ずることはできないと述べた。これは第三者委の見解であり、裁判所の判断ではない。

その上で、取締役の責任を追及しないとの判断も不合理とはいえないとした。理由として、取締役が上限超過を認識しながら配当を実施して会社財産を減少させたわけではないこと、債権者やその他の利害関係者への影響が限定的であること、会社が再発防止策に取り組んでいること、現任の取締役が報酬の自主返納を申し出ていることを挙げた。監査等委員会はこれら4点を踏まえ、提訴しないことを決議した。

報酬の返納額は、問題となった配当の規模に比べれば小さい。社長や副社長を含む現任の取締役は、職責に応じて月額報酬の10%から30%を1カ月から3カ月間自主返納すると申し出た。取締役会は2026年10月21日にこれを受理した。同社は返納額の総額を明らかにしていない。

第三者委は、名目上の責任額が2回の配当の合計である約88億8000万円に上ると指摘した。また、監査等委員会の委員長と常勤監査等委員が配当決議時の在任者であることにも触れ、判断の理由を株主に丁寧に説明するよう求めた。

再発防止策と次回配当

同社によると、配当を取締役会の独立した議案として持株会社単体の数値を記載することにしたほか、算定手順をチェックリストに追加し、作成者と確認者を分けた。取締役会の決議前に監査等委員会が法令遵守を確認する。研修の実施や外部専門家による確認も予定している。

2027年3月期の中間配当(1株当たり14円、総額44億9000万円)は、分配可能額の範囲内であることを確認した上で、10月30日に独立した議案として決議された。同社は連結業績への影響は軽微としている。