森ヒルズリート投資法人は9月14日、投資主に対し、2026年7月期の1口当たり分配金が前期と変わらず3100円になったと発表した。この安定は、実際にそれを支える数字の悪化の上に成り立っている。純利益は5.2%減の58億1000万円、営業収益は2.2%減の111億3000万円、営業利益は2.8%減の66億9000万円だった。
利益減少と分配金維持のギャップを埋めたのは、賃料の上振れではなく2つの手段だった。第一に、同REITは圧縮積立金(不動産の買換えに伴う譲渡益の税務上の取扱いに関連する制度)から1100万円を取り崩した。第二に、より重要な要素として、渋谷の有名な商業ビルの下にある底地であるラフォーレ原宿の持分5%を売却し、12億5700万円の売却益を計上し、その全額を分配に充てた。この売却益を除けば、同REITが開示する予想の前提条件からは、分配金を3100円で維持することはできなかったことが分かる。
経営陣は、投資家に対しこのパターンが続くと説明している。2027年1月期および2027年7月期の予想でも1口当たり分配金は3100円で維持されるが、これは同REITがラフォーレ原宿の土地持分をさらに売却し、それぞれ12億5400万円と12億7100万円の売却益を計上するとともに、圧縮積立金からさらに2億8000万円と5億500万円を取り崩すことを前提としている。純利益は両期とも55億5000万円、53億2000万円と、より低い水準が見込まれている。説明資料では、ラフォーレ原宿の持分売却は2030年まで5%単位で段階的に進める計画とされており、土地を少しずつ切り売りして分配金を下支えする、異例の複数年にわたる仕組みとなっている。
| 期間 | 純利益 | 積立金取り崩し | ラフォーレ原宿売却益 | 1口当たり分配金 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年7月期(実績) | ¥5.81bn | ¥11mn | ¥1.257bn | ¥3,100 |
| 2027年1月期(予想) | ¥5.55bn | ¥280mn | ¥1.254bn | ¥3,100 |
| 2027年7月期(予想) | ¥5.32bn | ¥505mn | ¥1.271bn | ¥3,100 |
保有ポートフォリオ自体は悪化していない。六本木ヒルズ森タワーや虎ノ門ヒルズ森タワーなど、都心の優良オフィスタワーが大半を占める同REITの11物件は、期末時点で稼働率98.2%となり、オフィスの稼働率は99.0%、更新・入替の両方の賃料が上昇した。住宅の稼働率は93.7%とやや低下したものの、賃料は更新で11.4%、入替で19.6%とオフィス以上に大きく上昇した。ただし問題は、既存契約のオフィス賃料が同REIT自身が試算する市場賃料をなお約9.3%下回っている点で、この差は前期の7.5%から拡大しており、力強い更新賃料の上昇であっても、動く目標を追いかけているだけで差を縮め切れていないことを意味する。
財務面では、有利子負債は期末時点で1906億円となり、期中に121億円の借入を借り換えたことで調達コストはやや上昇した。このうち約69%は金利スワップにより固定金利化されており、日本格付研究所はAA格付けを安定的見通しで維持した。総資産は4112億円、純資産は2019億円で、自己資本比率は49.1%だった。同REITはまた、自己投資口6800口を約9億円で取得・消却しており、規模は小さいものの意図的な資金の使途として、発行済投資口数を187万9435口に減らした。
これらのことは、当面の分配金が危険であることを意味するわけではない。同REITは今後2期分について、積立金の取り崩しと売却益の前提を見通せているためだ。しかし、見出しの3100円という数字を超えて読み込む投資家は、経常的な収益エンジンである運営・資金調達コスト控除後の賃貸収入が1年前より減っていること、そして今日の分配金を支えている土地区画がいずれ売却できる持分を使い果たすことに気づくだろう。
