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ベインキャピタル、イーソルTOBで1株820円提示 インサイダー株主の対価に2つの道筋

ベインキャピタルによるイーソル株1株820円のTOBは組み込みソフトウエアメーカーを上場廃止に導くが、株式13%を握るインサイダー関連の資産管理会社は応募を見送り、取引成立後に1株663円という低い価格で買い取られる道を選択、一般株主により多くのプレミアムを残す設計となっている

2026年9月2日2分で読めるイーソル4420
株式のブロックが2つの異なる経路をたどり、単一の所有ブロックへと向かう様子を描いた抽象図。企業買収における異なる対価の道筋を表している。

ベインキャピタルの買収目的会社である株式会社BCJ-110は9月2日、イーソルに対して1株820円で10月19日まで株式公開買付け(TOB)を開始した。イーソルの取締役会は前日にこの取引を承認し、株主に応募を推奨している。取引が成立すれば、自動車メーカーや産業機器メーカー、医療機器メーカー向けにリアルタイムOSを手掛ける同社は、わずか3カ月前の6月1日に設立されたベインキャピタルの持株会社体制の傘下に入ることになる。

本取引はマネジメント・バイアウト(MBO)であり、イーソルの社長兼CEO兼CTOは取引成立後に買収者の親会社へ再出資し、引き続き経営にあたることに合意している。同氏および現職・元の取締役を含むインサイダー6名は、合計167万8854株、発行済株式の8.51%を応募する契約を締結した。

一方、インサイダーに関連する他の2つの株主は異なる道を選んだ。元代表取締役の資産管理会社であるKAM Co.と、現職取締役の資産管理会社であるBOB Co.は、合わせてイーソル株式の13.24%を保有し、今回は一切応募しない契約を締結した。その代わり、買収完了後にイーソルが上場廃止となった後、同社は株式併合前の1株につき663円で両社の保有株式を直接買い取る計画で、この価格はベインキャピタルが、両社の税引き後の手取り額が応募した場合の水準を上回らないよう設計したものであり、820円という価格のより多くの部分を一般株主に残すことを意図している。

イーソル買収:インサイダー株主向け対価の2つの道筋
数値は、2026年9月2日に提出された買付者の公開買付届出書に基づく。
保有者保有比率取扱い対価
イーソルCEOを含む応募インサイダー6名8.51%現時点で公開買付けに応募¥820 per share
KAM Co.(資産管理会社)7.15%応募せず、スクイーズアウト後にイーソルへ売却¥663 per pre-consolidation share
BOB Co.(資産管理会社)6.09%応募せず、スクイーズアウト後にイーソルへ売却¥663 per pre-consolidation share

820円という価格は、イーソルの独立した特別委員会との8回にわたる交渉の末に導き出されたものだ。特別委員会は5月にベインキャピタルが提示した当初の600円という提案を拒否し、段階的に価格を引き上げさせたうえで、8月28日に最終価格を受け入れた。買収観測が市場に広がる前の直近の平穏な終値と比較すると、820円は19.71%のプレミアムに相当し、2019年半ば以降の日本国内の同種の買収事例108件における中央値プレミアム42.5%を大きく下回る水準だ。特別委員会の委員の1人である社外弁護士は、価格および株主に応募を推奨するとの多数意見に反対し、その判断は株主に完全に委ねるべきだと主張した。

ベインキャピタルは、持株会社からの出資最大47億円と、届出書に記載された国内銀行2行からの融資最大95億円により買収資金を調達する。融資は取得するイーソル株式を担保に供される。本公開買付けは、少なくとも1053万5800株、イーソル株式の53.43%の応募がなければ成立しない。公開買付けが成立しても買収者が対象株式のすべてを取得するに至らない場合、イーソルは株式併合によるスクイーズアウトを実施して残る少数株主を排除し、東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となる予定だ。