エア・ウォーター(東証プライムおよび札証、コード4088)は、連結グループの全社を対象に、グループ戦略との整合性、財務パフォーマンス、ガバナンスの健全性という単一の基準で選別している。同社は2026年9月17日にこの見直しを開示し、不適切な会計処理を受けて策定した再発防止策の4本柱の一つである「グループ全体の戦略見直し」を具体化したものだと説明した。残る3本柱、企業文化の変革、ガバナンス改革、経営基盤・内部管理体制の再構築は、すでに進行中だ。
経営陣によると、エア・ウォーターが同社の言う「ベストオーナー」のもとでより良く成長すると判断した事業は「速やかに」移管される。今回の開示では売却対象となる具体的な事業名は挙げられておらず、プログラムに紐づく金額も示されていない。これは同社が示した選別の枠組みであり、保留中の取引案件のリストではない。
選別を経て優先事業として残るのは3分野だ。産業ガスはグループの成長エンジンであり続け、半導体関連需要やインド・北米を含む海外事業を狙った再投資が行われる。医療事業と農業・食品事業は「社会的使命」を担う事業と位置づけられ、エア・ウォーターの強みが生かせる分野に絞り込み、グループ収益の安定化を目指す。
工程表は3段階で進む。FY2026からFY2028にかけて、エア・ウォーターは事業ポートフォリオの入れ替えを実行し、選択と集中によって同社の言う「収益力」を再構築する。2028年から2030年にかけては、半導体向け供給を含む国内産業ガス、インドと北米の海外産業ガス、医療、農業・食品という中核事業の成長加速に軸を移し、既存投資からのリターン回復に取り組む。2030年以降については、顧客の課題を起点に新たな価値を創出したいとしているが、この段階についての具体策はまだ示されていない。
資本政策について、エア・ウォーターは事業活動によるキャッシュフローを維持更新投資、新規の成長投資、通常の配当に充てるとしている。事業売却や再編によって生じる資金は別枠として位置づけ、成長投資や財務健全性とのバランスを取りながら、株主への「柔軟な追加還元」に使う方針だ。経営陣は2030年度の目標運営方針として、株主還元とともに、規模より収益性と財務健全性を優先すると位置づけているが、添付図表にある具体的なKPI数値については本稿では詳述しない。
この計画の真価が問われるのは発表そのものではなく、その先の展開だ。どの子会社が売却されるのか、いくらで売却されるのか、そして取引成立後に約束された「柔軟な追加還元」がどれだけ早く実現するのかである。
