日本郵船(東証:9101)は2026年9月7日、関東財務局に発行登録の変更届出書を提出した。この変更内容は、通常の発行登録更新に伴う事務的な内容にとどまらない、より具体的なものだ。同社は、本発行登録に基づき計画する無担保のトランジションボンドを発行する場合、調達資金の全額を、新規の支出であれ既存支出のリファイナンスであれ、中期経営計画に定める「2050年船舶燃料転換シナリオ」に基づくLNG燃料船向け支出に充当することを確約した。
発行登録自体には発行予定額の上限として2000億円が記載されており、うち1670億円がなお発行可能な枠として残っている。登録の有効期間は2028年3月までである。当該社債は無担保で、限定的なパリパス(同順位)条項を付し、1億円単位、額面(パー)で発行される予定だ。一方、社債投資家にとって重要な要素のほとんどは依然として未確定である。回号、発行総額、償還期日、払込期日はいずれも未定と記載されており、同社は具体的な日程は今後定めるとしている。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発行予定額の上限(発行登録) | ¥200bn |
| 発行登録に基づく発行可能残額 | ¥167bn |
| 登録の有効期間 | 2028年3月31日まで |
| 社債の構造 | 無担保、限定的なパリパス(同順位)条項付き |
| 単位 | 1口1億円、額面(パー)発行 |
| 発行総額 | 未定 |
| 償還期日 | 未定 |
| 払込期日 | 未定 |
この資金使途に関する確約は、日本郵船が2025年2月に改定したグリーン/トランジションファイナンス・フレームワークに基づくものだ。同社はDNVビジネス・アシュアランス・ジャパンからセカンドパーティ・オピニオンを取得しており、同フレームワークがICMAのグリーンボンド原則、ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則、環境省のグリーンボンドおよびサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン、ICMAのクライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック、そして金融庁・経済産業省・環境省が共同で策定したクライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針との整合性について評価を受けている。同フレームワークは独自の基準のもと、LNG燃料船を対象となるトランジションプロジェクトの一区分として別途定めている。
今回の届出書では、社債発行の根拠となる排出量削減の計算も改めて示されている。日本郵船は、2022年3月期を基準年として、2031年3月期までにスコープ1およびスコープ2排出量を45%削減する目標を掲げており、より長期的には、サプライチェーン全体のスコープ3排出量を含め、2051年3月期までにネットゼロを達成することを目指している。同社は別途、2023年3月に発表した中期経営計画のもと、2030年までに船隊の脱炭素化に約4500億円を投じる計画も示している。
今回の届出書は、これらの内容を価格の定まった具体的な取引に転換するものではない。発行額、クーポン、償還期限、決済日はいずれも示されていない。日本郵船は、資金がいくらになるかを市場に示す前に、その資金がどこに使われるかを先に示した形だ。
