日本製紙は、2025年に現地生産を開始したハンガリー子会社Nippon Paper Chemicals Europe Zrt.(NPCE)について、2026年12月31日をもって事業を停止することを決定した。同社は2027年3月期に、固定資産の減損を主体とする特別損失約50億円を計上する見込みだが、この数値は現時点の見積もりであり、会計処理の進行に伴い変動し得るとしている。
NPCEは2022年9月、資本金1400万ユーロでハンガリーに設立され、日本製紙がリチウムイオン電池向けに「SUNROSE MAC」ブランドで販売する化学品CMC(カルボキシメチルセルロース)の製造・販売を手がけてきた。日本製紙は同子会社の議決権を100%保有し、債務保証契約も結んでいる。現地生産の開始は2025年とごく最近で、従業員数は2026年8月末時点で24人だった。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 資本金 | €14mn |
| 設立 | 2022年9月27日 |
| 従業員数(2026年8月末時点) | 24 |
| 売上高(2025年12月期) | €74,000 |
| 営業損失(2025年12月期) | 約598万ユーロ |
| 事業停止予定日 | 2026年12月31日 |
| 特別損失見積額(2027年3月期) | 約50億円 |
同子会社の事業規模を見れば、採算が合わなかった理由は明白だ。2025年12月期の売上高はわずか7万4000ユーロにとどまる一方、営業損失は600万ユーロ近くに達した。日本製紙は、現地生産の開始と時期を同じくして欧米のEV政策が急速に後退したことが業績悪化の原因だと説明する。環境規制の見直しや普及促進策の変更、欧州・米国における補助金制度の改定などがその内容だ。同社によれば、これにより両地域のEV市場の成長が鈍化し、異例なほど激しい世界的競争にさらされることとなった結果、当面は安定的な収益確保が見込めず、投資に見合う採算性も失われたという。
損失や資金流出のさらなる拡大を避けるため、日本製紙はCMC生産を日本国内の既存工場に集約する方針だ。同社は今回の対応について、2026年5月28日に公表した「中期経営計画2030」で掲げるバランスシートの最適化、構造改革、収益力強化の一環と位置付けている。2027年3月期の連結業績予想については、今回の損失計上をはじめとする影響を織り込む必要があり、現在精査中で、内容が固まり次第開示するとしている。高まるEV需要に対応するために建設された工場だっただけに、今回の撤退は、ハンガリーでの生産開始時に日本製紙が見込んでいた欧米需要の到来スケジュールが実現しなかったことを認めるものとなる。
