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政策ウォッチ

金融庁、代理店の『比較なし推奨』を廃止

金融庁は、複数保険会社の商品を扱う代理店が顧客の意向と比較せずに一社を推奨できる抜け道を廃止し、手数料や販売目標、保険会社からの特典を選定根拠として認めないと明示、2028年3月に施行する

2026年8月28日3分で読める
複数の保険会社の見積書を比較用に並べた保険販売カウンターと、白紙の顧客ヒアリングシートを描いたイラスト。

日本の保険監督当局は、複数の保険会社の商品を扱う代理店が、顧客が実際に望むことに基づいて絞り込む前に特定の会社を推奨できてしまう抜け道を閉じた。金融庁は、複数の保険会社の商品を取り扱う代理店(乗合代理店)における『比較推奨』販売のルール案について、個人・団体133者から寄せられた759件のコメントへの回答を公表した。

今回の実質的な変更点は、保険業法施行規則第227条の2第3項第4号ハの削除である。これは、顧客の意向に基づく選定プロセスを経ずに代理店が特定の保険会社の商品を推奨できるとしていた規定だ。特定の商品を推奨したい代理店は今後、顧客が重視する点を確認し、それに基づいて商品を絞り込む意向確認プロセスに推奨を結び付け、その上で推奨理由を説明しなければならない。

代理店による商品推奨方法:改正前と改正後
保険業法施行規則第227条の2第3項第4号および、2025年改正に関する金融庁のコメント回答に基づく。
販売方法改正前改正後
方法ロ:顧客の意向に合致する契約を一つ以上選定し、推奨するPermittedRetained; used for intent-based selection and recommendation
方法イ:契約間の違いを説明し、一方が望ましい理由を含めて示すPermittedRetained
方法ハ:意向に基づく選定を行わずに契約を推奨するPermittedAbolished

金融庁自身が説明する改正の背景は、個別の事案にとどまらない広がりを持つ。コメント提出者からは、今回の改正がビッグモーター問題への対応かとの質問が出たが、金融庁は同問題も背景の一つであると認めつつ、より根深い問題は構造的なものだと説明した。保険会社が代理店に提示する手数料体系、販売目標に連動したインセンティブ、その他の支援が、顧客の意向とは関わりなく、顧客が最終的に購入する商品を左右してきたとしている。

今回の回答集では、ある保険会社を他社より推奨してよい根拠として認められるものと認められないものが、事例ごとに具体的に示されている。手数料の水準、販売目標、保険会社が代理店に提供する特典・支援は、商品にほとんど差がない場合であっても、推奨の『合理的かつ具体的な』根拠にはならないと、金融庁は数十の回答で繰り返し述べている。顧客が『お任せします』『何でもいいから勧めて』と言ったとしても、それだけで代理店が一社に絞り込む段階へ進めるわけではなく、代理店は価格、保障内容、特約など顧客が重視する点を引き出す努力を尽くした上で、対象を絞り込む必要がある。顧客に『お任せします』と言わせるよう仕向け、この手続きを回避する目的の営業トークは、明確に禁止されている。

対応を検討する代理店にとって特に重要となるのは、二つの実務上の制約だ。金融庁は、比較対象とすべき保険会社数の下限(例えば5社程度)を定めるべきとの業界からの要望を退けた。必要な比較範囲は社数ではなく、顧客の意向によって決まるとしている。また『比較可能な同種の契約が二つ以上』あるかどうかは、代理店が各保険会社と実際に締結している募集代理店契約の内容によって定まり、社内の非公式なルールでは判断できない。従って、販売不振の保険会社の商品を取り扱わないと社内で決めただけでは、その保険会社を比較対象から外したことにはならず、保険会社側との間で契約変更として明文化しない限り認められない。

改正後の内閣府令は、コメント結果の公表と同日に公布された。同府令および、それに対応する金融庁監督指針の改正は、いずれも2028年3月1日に施行される。これにより、乗合代理店には、規則が適用されるまでの約1年半の間に、推奨トークの見直しや社員研修、記録管理体制を整備する時間が与えられる。金融庁の意向としては、代理店が施行を待たずに対応することを望んでおり、2028年という期日を対応開始の目安とするのではなく『できるだけ早く』適合した体制に移行するよう求めている。