冨士ダイスは超硬合金製耐摩耗工具・ダイスの国内首位メーカーで、通期売上高予想を6.2%下方修正し244億円とした一方、利益見通しは引き上げた。この明暗は、中国によるタングステン輸出停止が10カ月目に入っていることに直接起因する。
2025年11月以降、中国政府は日本向けタングステン輸出の許可証を一切発給しておらず、国内原材料メーカーからの供給量は2025年水準の70~80%まで落ち込んでいると、東証上場の同社は決算補足資料で明らかにした。この供給逼迫により、冨士ダイスがタングステンコストの指標として用いる中間素材、パラタングステン酸アンモニウム(APT)の指標価格は、中国が輸出規制を強化する前の10kgあたり300ドルから、2026年4月までに10kgあたり3000ドルへと10倍に上昇した。同社は需給逼迫を背景に、この高値が続くとみている。
冨士ダイスが発表した2027年3月期第1四半期(2026年6月に終了した四半期)の売上高は50億51百万円(前年同期比22.4%増)、営業利益は6億18百万円(同252.4%増)だった。経営陣は、8月7日に最初に示した通期見通しを、売上高は下方修正、利益は上方修正するという相反する方向に同時に修正した。
| 項目 | 従来予想 | 修正予想 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | ¥26.0bn | ¥24.4bn | -6.2% |
| 営業利益 | ¥700mn | ¥840mn | +20.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | ¥520mn | ¥620mn | +19.2% |
売上高が従来の通期見通しを下回る見込みとなったのは、冨士ダイスがタングステンコストの上昇を価格に転嫁する中、国内顧客の受注量が想定以上のペースで減少しているためだ。一方、海外市場は価格上昇を吸収し、成長を続けている。営業利益見通しが上方修正されたのは、同社が採用する総平均法による棚卸資産評価が第1四半期のコスト上昇の影響を緩和したことに加え、再生原料の効率的な活用によりコスト影響が当初想定を下回ったためだ。経営陣は、下期にはタングステンコスト上昇がより本格的に製造コストに波及し、この緩和効果が薄れるため、下期の利益は上期のペースを下回る見込みだと注意を促した。
同社は供給制約を理由に、特殊製品ラインの一つである銅タングステン合金の新規受注を一時的に停止した。6月26日には、供給不足を踏まえて開発した合金を相互に販売するため、国内の産業用合金メーカーと業務提携を締結した。提携により、回転工具・混練工具向けにタングステンとコバルトの含有量を90%削減した「STN30」として販売する合金と、ダイスや耐熱治具向けのタングステン・コバルトフリー素材を扱う。これとは別に、冨士ダイスは10月1日付で海外事業部門を営業本部に統合し、国内外の営業情報を一元化することで、希少な原材料をより有効に活用し、グローバルな販売戦略を推進する方針だ。
2027年3月期の配当計画は1株当たり40円で据え置き、これは同社が4%に引き上げた株主資本配当率(DOE)目標に連動している。業績見通しはAPT価格を10kgあたり3058ドル、為替レートを1ドル=160円と前提としており、同社はいずれも不確実性の要因として挙げている。
これとは別に、冨士ダイスは8月31日、同じ決算補足資料に訂正を提出し、会社概要ページで会長と社長の記載が入れ替わっていた誤りを修正した。同社は数値データへの影響はないとしている。
