東京でタクシー・ハイヤー事業を営む大和自動車交通は、不動産部門が本業のタクシー事業を収益力で上回る中、発行済株式の約1割に相当する株式を住宅大手の大和ハウス工業に割り当てる。取締役会は9月9日、大和ハウスに対して1株2,040円で新株49万100株を発行することを決議し、調達額は総額9億9980万円、発行費用控除後で約9億8780万円となる。9月25日の払込を経て、大和ハウスは増加後の発行済株式総数の9.76%を保有することになり、これまで筆頭株主だった個人株主(保有比率は8.45%に低下)を上回る。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 新規発行株式数 | 490,100 |
| 発行価格 | 1株2,040円 |
| 調達総額 | ¥999.8mn |
| 手取概算額 | ¥987.8mn |
| 大和ハウスの割当後持株比率 | 9.76% |
| 議決権比率の希薄化 | 10.85% |
| 払込期日 | 2026年9月25日 |
既存株主は所有割合で9.34%、議決権比率ではより大きい10.85%の希薄化を受け入れることになる。同社は、目先の影響を上回る長期的な効果があると説明している。
調達資金の使途
調達資金は、同社が既に保有する築13年から41年の賃貸物件11棟の改修費用に充てられる予定で、2026年10月から2030年6月にかけて年間約2億5000万円を投じる計画だ。これは、金利負担の増加により物件の維持管理に充てられる手元資金が圧迫されているという、同社が率直に語る事情に対応するものだ。2026年3月31日に42億円の資産担保ローンを新たな30億円のシンジケートローンで借り換えた後、手元資金は31億3000万円となっている。
不動産事業がグループの収益を牽引する構図になっている。2026年3月期、不動産セグメントは売上高10億5000万円に対し営業利益率60.4%を計上し、前年の55.0%から上昇した。一方、運転手不足や燃料費の負担が続く中核のタクシー・ハイヤー事業は、売上高148億円に対し営業利益率はわずか2.4%にとどまった。
銀座の一等地を巡る取引
今回の提携で最も具体的な資産となるのが、同社が2010年まで本社を構えていた東京都中央区銀座一丁目の土地だ。大和ハウスは、同社が2022年以降、再開発の方法について協議してきた複数のデベロッパーの一社である。同社は自ら開発を手掛けるのではなく、この土地を大和ハウスに賃貸する方式を選択し、賃料収入を得る一方で、建設や運営に伴う費用とリスクは大和ハウスが負う形となる。着工は2027年4月を予定しているが、まだ着工には至っていない。同社が再開発対象として名前を明らかにしていない他の老朽物件についても、協議が続いている。
価格条件と今後の焦点
発行価格の2,040円は9月8日の終値と一致し、直近1カ月の平均株価に対して3.40%、3カ月平均に対して22.01%、6カ月平均に対して37.00%のプレミアムを含む。社外監査役2名を含む同社の監査役は、この条件について大和ハウスに過度に有利なものではないと判断した。大和ハウスは、株式を長期保有する方針を表明するとともに、取得後2年以内に売却する場合は同社に通知することを約束している。
今回の取引が業績に与える影響については、なお不透明な部分が残る。同社は、2027年3月期の連結業績への影響について精査中であり、業績予想の修正が必要な場合は別途公表するとしている。
