富士フイルムホールディングスは、日本、米国、カナダ、メキシコを除くほぼすべての地域で印刷版材の販売から撤退する。完全子会社の富士フイルムは、中国の製造拠点であるFUJIFILM Printing Plate (China) Co., Ltd.の全株式に加え、それ以外の地域におけるオフセット印刷版材の販売機能を、中国の印刷版材メーカーであるHuangshan Jinruitai Technology Co., Ltd.(JRT)およびその関連会社に譲渡することで合意した。
2026年8月28日に締結された契約には、工場や顧客基盤の譲渡にとどまらない内容が盛り込まれている。富士フイルムは、これらの地域における自社の製品ブランドと特許の使用をJRTに許諾する。この点は、関わる金額の小ささ以上に重要だ。JRTは既存顧客が慣れ親しんだブランド名のまま販売を続けられるため、ゼロから新たな名称で出直す必要がなくなるからだ。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 買収者 | Huangshan Jinruitai Technology Co., Ltd.(JRT)およびその関連会社 |
| 譲渡資産 | FUJIFILM Printing Plate (China) Co., Ltd.の全株式、日本・米国・カナダ・メキシコを除く地域における印刷版材の販売機能、当該地域における富士フイルムの製品ブランドおよび特許の使用許諾 |
| 契約締結日 | 2026年8月28日 |
| 株式譲渡の完了時期 | 2026年中 |
| 販売機能移管の完了時期 | 2027年上半期 |
| 譲渡価格 | 契約上の秘密保持条項により非開示 |
| 譲渡対象事業の売上規模 | 前期の富士フイルムホールディングス連結売上高の1%未満、営業利益は僅少とされる |
| 富士フイルムが維持する市場 | 日本、米国、カナダ、メキシコ |
JRTは安徽省黄山市に本拠を置き、2006年8月に設立された。開示資料によれば、事業内容はデジタル印刷用ソフトウェア、レーザー製版材料、印刷版材、印刷機器・消耗品、感光材料に及ぶ。富士フイルムは、契約上の秘密保持条項を理由に譲渡価格を開示しなかった。
数字だけを見れば、富士フイルムホールディングスほどの規模の企業にとっては誤差の範囲にすぎない。譲渡対象事業の売上高は前期の連結売上高の1%未満にとどまり、営業利益もグループ全体に対して僅少だとされている。富士フイルムは、2027年3月期の連結業績への影響について精査中としつつ、軽微にとどまる見込みだとしている。
実質的な影響は地理的な区分に表れる。株式譲渡が2026年中に完了し、販売機能の移管が2027年上半期に完了すれば、富士フイルムの印刷版材生産は日本のみとなり、JRTが日本、米国、カナダ、メキシコを除くすべての市場で版材販売を担うことになる。富士フイルムは、日本と北米市場については事業機会を見極めた上で維持する一方、それ以外の地域では製造規模を縮小すると説明している。
同社は今回の措置を、2024年4月に発表した「VISION2030」計画の一環と位置づけている。同計画では、グラフィックコミュニケーション事業を成長ではなく価値重視での再構築対象事業と分類しており、最終的にはより安定した基盤事業へと転換することを目指している。開示資料はまた、グラフィックコミュニケーションを含むビジネスイノベーション部門全体について、部分的なスピンオフを含む戦略的選択肢を富士フイルムが検討していることにも触れている。スピンオフの検討は継続中であり、譲渡価格は契約上の秘密保持条項により非開示のままだ。株式譲渡は2026年中、販売機能の移管は2027年上半期に完了する予定である。
