東京地裁は、ノーザンTKベンチャー(Northern TK Venture Pte Ltd、以下NTK)が第一三共を相手取り起こした請求をすべて棄却した。これにより、インドのフォーティス・ヘルスケアに対する株式公開買い付けが阻止された問題をめぐり、当初200億円だった賠償請求額が2033億円まで膨らんでいた3年越しの訴訟に決着がついた。
10倍に膨らんだ請求額
マレーシアのIHHヘルスケア・バーハッド(IHH Healthcare Berhad)の完全子会社であるNTKは、2023年10月16日に東京地裁へ200億円の損害賠償を求める訴えを起こし、同年11月13日に第一三共へ訴状を送達した。2025年5月9日、NTKは請求額を2033億180万7840円、約2033億円に拡大する訴え変更を申し立てた。訴訟全体では、損害賠償に加え、株式取得に対するこれ以上の妨害を禁じる差止命令、そしてNTKが指定する内容の声明を第一三共自身のウェブサイトに掲載し、同一の文言をインドの証券規制当局SEBIに提出するよう命じることの3つの救済を求めている。
| 日付 | 出来事 | 請求額 |
|---|---|---|
| 2023年10月16日 | NTKが東京地裁に提訴 | ¥20bn |
| 2023年11月13日 | 第一三共へ訴状を送達 | - |
| 2025年5月9日 | NTKが請求額を拡大する訴え変更を申し立て | ¥203.3bn |
| 2026年9月10日 | 東京地裁が請求をすべて棄却 | - |
背景にあるランバクシー仲裁
NTKの主張の発端は、第一三共がインドのジェネリック医薬品メーカー、ランバクシー・ラボラトリーズの旧株主を相手に勝訴した2016年4月29日付の仲裁裁定を執行しようとした経緯にある。第一三共がインドの裁判所を通じてこの裁定の執行を進める中、インド最高裁はNTKによるフォーティス・ヘルスケアへの株式公開買い付けの停止を命じた。NTKはこの停止が第一三共によるものだと主張し、損害賠償に加え、自ら指定する内容の声明を第一三共のウェブサイトとインドの証券規制当局に公表するよう求めた。これに対し第一三共は、停止は企業による妨害ではなく、裁判所の監督下にある適法な執行手続きの結果であり、フォーティス、IHH、NTKはそれぞれ個別にインド最高裁と同国の市場規制当局に手続きの続行許可を申し立てたが、認められなかったと反論した。
棄却、ただし決着とは限らず
2026年9月10日、東京地裁は第一三共の主張を全面的に認め、NTKによる損害賠償請求、差止請求、声明公表請求のいずれも棄却した。第一三共は、この判決が現時点で同社の業績に与える影響はないとしている。同社はまた、NTKが上級審に控訴した場合には、その手続きの中で引き続き自社の主張を展開していく方針であるとも述べており、2033億円の偶発請求が今回の判決により当面訴訟記録から外れたとはいえ、フォーティス・ヘルスケアをめぐる根本的な争いが必ずしも終結したわけではないことを示している。
