ガバナンス崩壊を受けた許可申請の取り下げ
中部電力は9月14日、浜岡原子力発電所3号機・4号機に関する設置変更許可申請を取り下げた。同社が発電所の地震動データに関する不適切な事案について自社調査結果を公表した翌日のことだった。同日の発表では、社長と取締役会議長も辞任した。赤沢経済産業相は記者団に対し、この人事刷新は一連の不祥事を受けて中部電力のガバナンスと組織文化を「解体し立て直す」試みを反映したものだと述べ、原子力への国民の信頼を損なった今回の事案を「誠に遺憾」と評した。
機能しなかった内部通報制度
赤沢氏が最も厳しい言葉を向けたのは、社内からの警告がどう扱われたかという点だった。中部電力は地震動データの問題について社内から複数の内部通報を受けていたにもかかわらず、通報制度が全く機能しなかったと赤沢氏は指摘し、その不備を「極めて重大」と評した。同氏は、組織全体の立て直しに加え、通報者保護を含む内部通報体制の抜本的な見直しを同社に求めており、経済産業省としてその改革が実際に実行されるよう働きかけていく考えを示した。
経済産業省が持つ権限は、電気事業法に基づきすでに発出済みの報告徴収命令にある。赤沢氏は、同命令に基づく再発防止策についての中部電力の正式な回答を受け取り次第、同社の調査報告書を精査し、「最も厳正な」対応を検討すると述べた。具体的な時期や検討中の処分の範囲については言及しなかった。
再稼働の議論は今のところ対象外
中部電力が将来的に浜岡原発の再申請を目指したいとしている点や、経済産業省が想定するスケジュールや手続きについて問われると、赤沢氏は再稼働に関する議論そのものを一切避けた。日本の基本方針では、再稼働は独立機関である原子力規制委員会が福島第一原発事故後の安全基準への適合を認定することと、地元地域社会の理解を得ることが条件とされている。赤沢氏は、今回の事案が招いた国民の不安を踏まえれば、そもそもその議論を始める前提すら現時点では整っていないと述べた。また別の記者は、赤沢氏が明言を避けた手続き上の論点を提起した。3号機は来年で運転開始から40年を迎えるが、現行の許可申請を取り下げた後も将来の60年運転延長申請が可能かどうか、また同機がすでに10年以上審査に費やした期間が運転年限の計算に算入されるかどうかは不明だという点だ。赤沢氏はこの点について、現時点で付け加えることはないと述べた。
2040年の目標達成、一段と困難に
今回の取り下げは、政府自身が掲げる数値目標と隣り合わせにある。日本の2040年の電源構成計画では、総発電量が2030年の水準を上回る一方、原子力が電源構成の約2割を担うと想定されている。赤沢氏は、設備利用率を80%と仮定した場合、原子力比率20%を達成するには2040年度に31基から34基の原子炉が稼働している必要があると機械的な試算を示し、この水準は原子力規制委員会が承認する再稼働、定期検査の効率化、運転サイクルの長期化、次世代炉の開発によって達成可能だとの見方を示した。浜岡2基がこの全国合計に含まれるかどうかは、会見記録では言及されていない。中部電力は、将来的に浜岡原発の再申請を目指したいとするのみで、具体的な時期は示していない。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 2040年電源構成に占める原子力比率 | 約20% |
| 想定設備利用率 | 80% |
| 目標達成に必要な原子炉基数 | 31基から34基が稼働 |
| 浜岡3号機・4号機の再稼働申請 | 2026年9月14日に取り下げ |
石油備蓄、二次的な懸念事項
赤沢氏は中東情勢についても質問を受けた。現在、サウジアラビアの東西パイプラインは稼働を停止している。同氏は、日本の原油備蓄は国家備蓄と民間備蓄を合わせて約200日分あり、民間備蓄だけでも約95日分に達していると説明し、10月着の原油タンカーの大半はすでに日本に向けて出港済みだと述べた。これを踏まえ、10月分については備蓄放出の必要はないとし、それ以降の月についてはサウジアラビア側の復旧状況や民間調達の動向を見ながら判断するとした。
