EQTが支援するカカクコムの非公開化を目指す買収主体カムグラス1は、ベインキャピタルとLINEヤフーによる対抗提案を退けるべく、株式公開買付価格を1株3571円から3680円へと1カ月で3度目の引き上げを行った。5月13日から開始されている公開買付期間は9月29日までとなり、決済日も10月6日にずれ込んだ。
今回の価格引き上げが最も影響するのは、カカクコムの筆頭株主であり、自社保有株式を公開買付けに応募しない契約を結んでいるデジタルガレージだ。デジタルガレージは保有する全株式4091万7700株(持ち株比率20.68%)を、総額1224億円で売却する計画である。公開買付けに応募しない契約(ノンテンダー契約)を締結しているため、その株式売却は通常の公開買付けとは異なる形をとる。すなわち、公開買付け後のスクイーズアウトを経て、カカクコムがデジタルガレージの保有株式を直接買い取る仕組みで、その買取価格は2903円から2992円に引き上げられた。デジタルガレージによれば、みなし配当課税の規定を用いることで、この買取価格は公開買付価格でそのまま応募した場合と税引き後手取り額が一致するよう設定されており、一般株主に対して優位性を得るものではないという。取引が2027年3月期中に完了した場合、デジタルガレージは単体で約370億円の特別利益を、連結では持分法適用関連会社株式売却益として約300億円を計上する見込みで、いずれも取引完了を前提とする。カカクコム自体は、価格比較サイト「カカクコム」、飲食店口コミサイト「食べログ」のほか、人材・インキュベーション事業を運営しており、2026年3月期の売上高は941億円、営業利益は272億円だった。
今回相次いだ価格引き上げは、対抗陣営の動きに直接起因する。LINEヤフーとベインキャピタルのプライベートエクイティ部門は7月、BCPEブリッツケイマンと呼ばれる買収主体を通じて、カカクコムを非公開化する法的拘束力のある提案を提出した。LINEヤフーは間接的に共同出資する計画で、これは取引完了ではなく、対抗提案として計画されている段階にとどまる。カカクコムの主要株主であるオアシス・マネジメントは、ベイン・ヤフー陣営への応募に合意していたが、契約上定められた期間内にベイン側が対抗する価格引き上げに追随できなかったことから、この合意は8月20日に失効した。オアシスは8月18日、1株3640円を下回る価格の提案には応じない意向を示していた。カムグラス1が新たに提示した3680円はこの水準を上回っており、買収提案者側は、オアシスが応募に応じる可能性は大幅に高まったとしているが、合意には至っていない。
カカクコムの第2位株主であるKDDIもカムグラス1との間で公開買付けに応募しない契約を締結しており、この契約が対抗提案にとって事実上の下限価格を設定する形となっている。KDDI保有株式の拘束を解除する条項が発動するには、対抗提案がカムグラス1の現行提示価格を少なくとも2%上回る必要があり、9月10日時点でその水準は3754円となる。
価格引き上げの原資として、カムグラス1の親会社は出資予定額を2110億円から2250億円に引き上げた。銀行融資枠は2250億円で据え置かれ、三井住友銀行とみずほ銀行を主幹事とする6行から調達する。これにより、調達総額は4360億円から4500億円に増加した。
| 日付 | 公開買付価格(1株当たり) | 自己株式買取価格(株式併合前、1株当たり) |
|---|---|---|
| 2026年8月27日 | ¥3,571 | ¥2,903 |
| 2026年9月10日 | ¥3,680 | ¥2,992 |
カカクコムの取締役会は5月以降、カムグラス1による提案を支持してきたが、7月には株主に応募を推奨する意見を撤回し、応募するか否かの判断は個々の株主に委ねる形とした。ただし、特別委員会が取引を支持する姿勢自体は、8月28日時点で変わっていない。今回の価格引き上げがオアシスを取り込み、公開買付け自体を成立させるのに十分かどうかは、9月29日の応募期間終了まで明らかにならない。
