電通総研の取締役会は8月28日、同社株式に対する1株2,880円での公開買付けへの賛同を決議し、株主に応募を推奨することを決めた。買収者は合同会社VICで、2026年7月14日に設立された合同会社であり、伊藤忠商事が80%、残る20%を別の少数株主が保有する。計画通りに取引が成立すれば、電通総研は東京証券取引所プライム市場から上場廃止となる。
今回のスキームでは、親会社である電通グループを現金化させず、そのまま残す形を取る。電通グループは電通総研株式120,779,736株(持株比率61.78%)を保有しており、その全株について公開買付けに応募しない旨の契約を締結済みだ。買収者が公開買付けで残る株式のすべてを取得できなかった場合、続けてスクイーズアウトを実施する計画で、これにより伊藤忠側の合同会社の議決権比率は38.22%、電通グループは61.78%となり、両社が同社の唯一の株主となる。伊藤忠商事は8月27日に日本経済新聞が報じた後も取引の内容を認めず、8月28日付の開示では、当日取締役会を開催しており、決定があれば速やかに開示するとのみコメントした。電通総研は独自の開示を行い、1株2,880円の提案内容を確認するとともに、取締役会が既に本公開買付けへの賛同と応募推奨を決議済みであることを明らかにした。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 買付価格 | ¥2,880 per common share |
| 買付予定数の下限 | 9,340,400 shares (4.78% ownership); no maximum set |
| 議決権比率(スクイーズアウト後) | Godo Kaisha VIC 38.22% / Dentsu Group 61.78% |
| 配当への影響 | FY2026 year-end dividend of ¥45.00 to be canceled if the tender offer succeeds; only the ¥22.50 interim dividend already paid would remain for the year |
| 公開買付け開始予定時期 | Early November 2026, pending antitrust clearance in Japan, China and the EU |
| スクイーズアウトの手続き | Share consolidation planned around March 2027 to leave only Dentsu Group and the bidder as shareholders |
この価格に至るまでには3回の交渉を要した。伊藤忠商事が7月14日に提示した当初の提案額は、期末配当を実施しないことを前提とした1株2,300円だった。独立取締役3名からなる特別委員会は、名前を明らかにしていない別の買収候補者との競争的な手続きを実施し、伊藤忠商事の提案額を8月6日までに2,780円、さらに8月13日には最終的な2,880円まで引き上げさせた。その後、伊藤忠商事はこれ以上の増額は困難であると回答した。この価格は、買収に関する憶測が初めて浮上する前日である7月1日の終値を34.96%上回り、公表前日の8月27日の終値を5.15%上回る水準となっている。
公開買付け自体はまだ開始されていない。合同会社VICは2026年11月上旬の開始を目指しているが、それには日本、中国、EUでの企業結合審査の届出をクリアする必要があり、いずれも届出から承認まで約1カ月を要する見込みだ。買付予定数の下限は9,340,400株(発行済株式の4.78%)に設定されており、これは電通グループと買収者を合わせた議決権比率が、2027年3月頃を想定する株式併合によって応募しなかった株主をスクイーズアウトするために必要な3分の2以上に達するよう算出された水準である。
電通総研は、公開買付けが成立した場合には期末配当を実施しないことを決議し、従来1株45.00円としていた予想配当を、既に支払い済みの中間配当1株22.50円のみに引き下げる。同社は、今回の買付価格は期末配当を実施しないことを前提に設定されたものであり、翌事業年度に向けて設定していた配当性向目標を下回る結果になると説明した。
これらはいずれも確定した事項ではない。公開買付けの開始、独占禁止法に基づく承認、そして最終的なスクイーズアウトはいずれも今後満たすべき条件であり、電通総研の取締役会は、公開買付けの開始までに特別委員会の意見が変われば、賛同の判断を見直す権利を留保している。
