金融庁は金融審議会の下に新たに2つの会合を設置することを提案している。一つは成長企業向け融資や国境をまたぐ取引に関する融資ルールの見直し、もう一つは生命保険契約者を保護するセーフティネットの再設計を目的とする。8月31日に開催される金融審議会総会・金融分科会合同会合の議事次第では、確定した政策ではなく、それぞれの作業部会(ワーキング・グループ)案について具体的な論点が示されている。
異なる市場向けに作られた融資ルール
最初の会合である「成長企業金融に関するワーキング・グループ(仮称)」は、貸金業法が借り手の種類にかかわらず一律に適用している事業性融資ルールの緩和を検討する。具体的な論点は3つある。再編や買収を手掛ける大企業向けの「プロフェッショナル向け」融資に既存ルールが適合しているかどうか、海外企業を買収する日本企業向けに組成され、外貨建て資金が必要になることが多いシンジケートローンに、日本の銀行免許を持たない外国銀行の参加を認めるべきかどうか、そしてベンチャーデット貸し手が社債発行によって資金を調達しやすくなるよう、ノンバンク社債法が定める非銀行系社債発行体への自己資本規制を見直すべきかどうかである。金融庁はまた、デジタル化以前の融資慣行から残る紙ベースの開示義務や物理的な掲示義務の見直しも検討したい考えだ。
背景にあるのは、現在の融資市場では吸収しきれないディールメイキングの増加だ。2025年の日本のM&A件数は過去最高の5115件、金額は37兆9000億円に達し、前年比で件数は8.8%増、金額は86.7%増となった。こうした資金調達では預金取扱銀行が依然として主流を占めており、金融庁自身の比較によると、日本のノンバンク貸し手による事業性融資残高は、米国のプライベートクレジット市場の規模の約28分の1にとどまっている。
| 区分 | 件数(2025年) | 金額(2025年) | 2024年比 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 5,115 | ¥37.9tn | +8.8% deals, +86.7% value |
| IN-IN(日本国内間) | 4,086 | ¥13.6tn | +10.4% deals, +97.1% value |
| IN-OUT(日本企業による海外買収) | 657 | ¥18.2tn | -1.2% deals, +87.6% value |
キャプティブの空白と補助金期限
第二の会合である「保険制度ワーキング・グループ(仮称)」は、2つの異なる論点を扱う。一つは、日本が損害保険会社向けの国内再保険キャプティブ制度を創設すべきかどうかだ。現在そうした制度は存在せず、自社リスクのみをキャプティブで引き受けたい企業グループは、フルライセンスの保険免許を取得しなければならない。この負担は非常に重く、多くの日本の大企業グループはハワイなど海外でキャプティブを設立しているのが実情だ。企業リスクマネジメントに関する政府の委託を受けた研究会は4月の報告書で、キャプティブ活用についてさらに検討するよう提言した。
もう一つの論点には、より明確な期限がある。生命保険契約者保護機構は、生命保険会社が破綻した際の契約移転を支援するため業界拠出の準備金を活用しており、2000年に初めて導入されて以来6回延長されてきた政府の特別補助制度に支えられている。この規定は2027年3月末で失効する。現行の枠組みでは、事前積立の業界準備金の上限は4000億円で、2022年3月までに全額積み立てが完了している。また政府保証付き借入枠は4600億円が上限であり、政府補助はこれらの金額を超える支援が必要となり、かつ法定基準を満たす場合に限り利用できる。その基準とは、業界資金のみでは生命保険会社の財務状況が著しく悪化し、保険事業への社会的信頼が損なわれ、国民生活や金融市場に極めて深刻な混乱が生じる恐れがあることであり、この基準がこれまで実際に発動されたことはない。
両会合とも、確定したルール案ではなく論点のリストから議論を始める。金融審議会は8月31日に会合を開き、両ワーキング・グループを正式に発足させる予定であり、その検討結果は、外国金融機関が大型の日本のシンジケートローンに参入しやすくなるかどうか、また2027年3月の期限到来後に政府が破綻生命保険会社向けの支援制度を延長するかどうかの判断材料となる。
