栗田工業(6370)が発表した上期連結決算は、売上高が前年同期比9.3%増の2069億円と伸びたものの、事業利益は74.0%減の62億9000万円に落ち込んだ。米国で受注した電子産業向け大型水処理装置の案件1件が増収減益の要因だとしている。売上高事業利益率は前年同期の12.8%から3.0%に低下した。同社はこれまでも適時開示でこの案件に言及してきたが(Tokyo Briefの過去の記事)、今回の中間決算で損失計上の内訳が明らかになった。
単一案件で3つの会計処理
引当金の計上は減益要因の一部にすぎない。栗田工業はこの案件に工事進行基準を適用しており、見積工事原価総額に対する実発生原価の割合を工事進捗率としている。今回、見積工事原価総額を大幅に引き上げたことで進捗率が低下し、すでに計上していた売上高と利益が減額された。さらに、見積工事原価総額が受注高を上回る見通しとなったため、損失見込額を売上原価の工事損失引当金として計上した。
3つ目は、クリタ・アメリカ(電子市場)の水処理装置製造工場における有形固定資産(使用権資産を含む)の減損損失で、その他の費用に計上した。これら3つの処理により、営業利益、税引前利益、中間利益がそれぞれ184億円押し下げられた。このうち引当金は88億円、減損損失は16億円を占める。決算短信では売上高減額分の具体的な金額は開示されていない。
また、その他の収益・費用を除いた事業利益の増減分析では、上期にこの米国案件で200億円の追加コストが発生したことが別途示されている。この追加コストと為替影響を除けば、事業利益は8月時点の予想を20億円上回っていた。
現場で何が起きたのか
栗田工業によると、この案件は米国の電子産業向けとして初の受注だった。業務範囲を設計や調達、モジュール製造に限定し、日本から要員を派遣して設計やプロジェクト管理を主導した。第1四半期時点ではコスト影響を約30億円と見積もっていたが、専門家を交えて物量や残工事を精査した結果、影響額を236億円へ引き上げた。
決算短信では、米国固有の規格や設計認証、顧客要件への対応で設計の遅れや品質上の課題が生じたとしている。追加対応には設計の見直しや部材の追加調達、モジュールの再製作が含まれる。さらに決算説明会資料によると、工期の挽回に向けて外部リソースの活用や現場施工も追加した。決算短信には顧客名や完工時期の記載はない。
セグメント業績と通期予想への影響
電子セグメントは、事業損益が59億7000万円の赤字、営業損益が27億2000万円の赤字となった。営業損益には、売却を完了したペンタゴン・テクノロジーズ・グループに係る在外営業活動体の換算差額50億2000万円をその他の収益に計上した影響が含まれている。全社の営業利益は前年同期比62.5%減の95億4000万円、親会社の所有者に帰属する中間利益は56.9%減の74億円だった。最終利益は継続事業と非継続事業の合算で、非継続事業となったペンタゴン事業が36億7000万円の利益を計上している。
2027年3月期通期の事業利益予想は、8月時点の615億円から400億円へ下方修正した。ただ、今回の追加コスト236億円を除けば、21億円の上方修正となる計算だ。配当は中間期が1株当たり67円、通期予想は134円とした。同社は、中期経営計画「PSV-27」の経営目標および成長戦略に変更はないとしている。
