日本銀行の政策委員会は2026年9月18日、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、1.25%程度とすることを賛成7、反対2の多数決で決定した。11月5日公表の議事要旨によると、異論は双方向から出た。委員2人は利上げは時期尚早と主張した一方、利上げに賛成した2人は、物価がすでに目標にどれほど近づいているかについて日銀自身の声明文の表現が控えめすぎると異議を唱えた。Tokyo Briefの関連記事
ハト派からの反対意見
浅田統一郎委員と佐藤綾野委員は、無担保コールレートの誘導目標(1.25%)、補完当座預金制度の適用利率(1.25%)、基準貸付利率(1.5%)の3議案すべてに反対した。新たな金利水準は2026年9月24日から適用されることになっていた。
浅田委員は、足元の生鮮食品を除くCPI上昇率が2%を下回っており、景気も必ずしも力強いとは言えないと指摘。6月の利上げから間もないタイミングでの追加利上げは、生産や雇用、実質所得に悪影響を及ぼしかねないと主張した。佐藤委員は、経済・物価情勢が以前と比べて大きく加速しているわけではなく、個人消費の動向や予想物価上昇率が2%程度に定着しているかを見極めるには時間がかかると述べた。
| 政策委員 | 金利議案への賛否 | 主張の内容 |
|---|---|---|
| 浅田統一郎 | 反対 | 生鮮食品を除くCPIは2%を下回り、景気も必ずしも力強くない。1.0%の誘導目標を維持すべき |
| 佐藤綾野 | 反対 | 経済・物価情勢は大きく加速しておらず、現時点での利上げは適当ではない |
| 高田創 | 賛成 | 声明文の物価見通しの表現に反対。基調的な変動を含めCPIはおおむね目標に到達 |
| 田村直樹 | 賛成 | 声明文の物価見通しの表現に反対。基調的なCPI上昇率はすでに目標とおおむね整合的 |
より踏み込んだ物価見通しを求めた賛成派
高田創委員と田村直樹委員は利上げに賛成したものの、声明文における物価見通しの表現には反対した。高田委員は、基調的な物価変動を含めCPI上昇率は物価安定の目標におおむね達していると主張。田村委員は、基調的な物価上昇率がすでに目標とおおむね整合的な水準にあると述べた。声明文は両委員の反対意見を注記した上で、全会一致で採択された。
声明文自体は、基調的な物価上昇率が2%に近づきつつあるとし、目標を上回って上振れするリスクに警戒を示している。大方の委員は、経済が2026年7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の標準シナリオに沿って推移しているとの見方を共有した。
利上げ間隔短縮の理由と今後の展望
ある委員は、今回の利上げが6月以来3カ月ぶりで従来より間隔が短くなるとした上で、その理由として景気が予想以上に底堅いことを挙げた。別の委員は、米欧が利上げに転じる中、日銀は機動的な対応が必要であり、一定のペースに固執するよりも利上げ幅を議論すべきだと述べた。さらに別の委員は、中立金利との距離が縮まれば、上下双方向への政策調整が可能になると指摘した。
今後の政策運営を巡っては、基調的な物価上昇率が2%に近づき、緩和的な金融環境が続く中、利上げを継続すべきだとの認識で委員は一致した。ただ、そのペースについては意見が分かれた。ある委員は、物価の上振れリスクの兆候が現れれば利上げペースを速める必要があると指摘した。別の委員は、日銀の対応が後手に回るほど物価上昇のペースは速くなく、拙速な行動は不要だと述べた。複数の委員は、政策課題が基調的な物価上昇率の押し上げから2%近傍での安定へと移行しつつあるとの見方を示した。
中立金利の水準については結論が出ていない。ある委員は、政策金利の最終到達点(ターミナルレート)に関する市場の見方を反映するとされる2年先1年物OIS金利が足元で2%を超えたと指摘した一方、別の委員は、市場の利上げ織り込みが日本の経済や賃金・物価の動向に比べてやや先走りしていると述べた。多くの委員は、中立金利を事前に特定することはできず、利上げの都度、金融緩和の度合いを判断すべきだとした。
委員が指摘した物価リスク
委員は物価の主なリスク要因として、中東情勢、AI関連需要、為替相場を挙げた。ある委員は、7月以降に原油価格が約50%上昇し、円相場は約5%上昇したと述べた。多くの委員は、原油価格の再上昇に伴い物価の上振れリスクが依然として高いと指摘したほか、一部の委員は価格だけでなく原油の供給量自体が制約を受けるテールリスクにも言及した。
執行部は、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)が当面2%程度で推移した後、今年度後半にかけて加速し3%を超える水準に達するとの見通しを示した。一方、政策委員会の声明文は「2%を明確に上回る」との記述にとどめている。ある委員は、現在検討されている食料品の消費税減税について、価格にすべて転嫁された場合、2027年度のCPI前年比上昇率を1%ポイント超押し下げると試算した。
政府の出席者も意見を表明した。内閣府は過去の利上げの累積的な影響を検証するよう日銀に求め、中立金利の推計についても検討が必要になる可能性があると述べた。財務省は政策意図を市場に丁寧に説明するよう求めた。
