金融庁の「成長企業への資金供給の在り方等に関するワーキング・グループ」は2026年10月9日、大企業などプロの借り手向け融資に対する貸金業法の規制緩和や、社債を発行するノンバンクに対する資本金要件の緩和について議論した。議事録に記録されているのは論点を巡る討議であり、決定事項ではない。
「プロの借り手」の範囲
金融庁事務局は、貸し手と渡り合えるだけの十分な経営基盤や交渉能力を備えているとみなされる13類型の借り手を定めたコミットメントライン法の対象範囲を出発点とする案を示した。プロ向け貸し付けのみを行う貸金業者については、参入規制(資本金要件、貸金業務取扱主任者の設置要件、登録の更新制度)や、書面交付および取り立てに関する行為規制、債権譲渡に関する規制の緩和について委員の見解を求めた。
事務局はまた、こうした貸金業者を国が監督すべきかや、大企業などの借り手から受け取るコミットメントフィーをみなし利息の対象外とすべきかについても意見を求めた。事務局の説明によると、融資枠が実際には引き出されなかった場合、手数料は実融資額に対して無限大の割合となる。適格な借り手に融資する銀行は既にコミットメントライン法の適用を受けるが、貸金業者が同じ手数料を受け取ると行政処分の対象になり得るという。
業界側の要望
日本プライベート・エクイティ協会は、ファンドの存続期間が約10年に及ぶにもかかわらず、会員各社は純資産要件や主任者の配置義務、3年ごとの更新が必要な貸金業登録に直面していると指摘。プロ投資家やファンド向けのメザニンローンやコミットメントラインに対する規制は過度だと訴えた。更新の何が負担になっているのかとの委員の質問に対し、同協会は問題は事務作業ではないと回答。更新が拒否されればファンドが3年で終了しかねないという不確実性が問題だと説明した。
Fintech協会は独自の集計として、2025年のベンチャーデット市場が通常のスタートアップ向け融資を含めて約2200億円、このうち新株予約権付融資・社債が292億円だったと説明した。その上で、ノンバンク社債法の資本金10億円の要件を1億円に引き下げ、登録制度を廃止する一方、同法独自のディスクロージャー制度は維持するよう提案した。金融庁は、ノンバンクの社債による資金調達を登録制度で制限すべきかや、貸金業を主な事業とし、社債の発行や有価証券報告書の提出を行う貸金業者にも貸付金や不良債権の開示を求めるべきかについて意見を求めた。
委員から慎重論が出た論点
大半の委員は方向性に賛同した。ただ複数の委員から、コミットメントライン法の対象範囲ではファンドや特別目的会社(SPC)、資本金の少ないスタートアップが外れるおそれがあり、狭すぎるのではないかとの指摘が出た。弁護士の委員の1人は、借り手が自ら申し出てプロとしての扱いを受けられる金融商品取引法型の制度を提案。別の委員は、小規模企業や個人事業主を対象に含めるかどうかも詰める必要があると述べた。
最も意見が一致したのは監督のあり方だった。この点に言及した委員はいずれも、国による監督と登録制または届出制の維持を支持した。ある委員はシャドーバンキングのリスクや、個人向け商品にリスクが波及する懸念を挙げた。別の委員は、監督当局に対し、貸し付けの内容だけでなく資金調達の方法も点検するよう求めた。専門的知見は乏しいと断ったある委員は、貸し手と借り手の双方でモラルハザードが起きないようくぎを刺した。教授の委員はノンバンク社債法をFintech協会の提案通りにまで緩和すべきか疑問を呈し、別の委員は不良債権の開示維持を求めた。
議事録には報告書の取りまとめや法改正に向けた日程は示されていない。次回会合の開催日は追って発表される。
